河野談話の作成経過ー石原元官房副長官ー衆院予算委で参考人とし真実を話す
元慰安婦証言 調査を検討
2014年2月21日 讀賣新聞
菅宣房長官は20日の衆院予算委員会で、日本政府がいわゆる従軍慰安婦問題で「おわびと反省の気持ち」を表明した1993年の河野洋平宮房長官談話Eに関し、根拠となった韓国人元慰安婦16人の証言内容を検証する政府チームの設置検討を表明した。
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チーム設置政府で
「河野談話」根拠の16人
河野談話は、元慰安婦の証言をもとにまとめられたが、研究者などから十分な裏付け調査がなされたのかどうか疑問視する声があがっている。日本維新の会の山田宏衆院議員が検証チーム設置を求め、菅氏は「機密を保持する中で検討したい」と応じた。ただ、菅氏は、証言をまとめた資料の公開については「非公開を前提にやっている。機密扱いの中で、どうできるか検討したい」と述べるにとどめた。政府高官は記者団に「外部の人に見せるというのは難しい。やはり政府内ということだ」と語った。
一方、この日の委員会には、河野談話とりまとめの実務責任者だった石原信雄・元宣房副長官も参考人として出席した。石原氏は、「日韓両国の将来のため、
彼女たち(元慰安婦)の話を聞くことが事態打開になるのであればということでヒアリングを行った」と説明。「証言の事実関係を確認した裏付け調査は行われていない」と明言した。談話の内容について「(韓国側と)意見のすり合わせは当然、行ったことは推定される」と述べ、韓国の主張に配慮した可能性が高いことを示唆した。
石原氏は、韓国が現在も慰安婦問題で厳しい態度をとっていることに関し、「当時の日本政府の善意が生かされていない、ということで非常に残念に思う」と韓国政府を批判した。
証言裏付けしていない■韓国とずり合わせ行ったと推定
石原氏ら答弁要旨
河野談話に関する主な質疑は次の通り。
山田宏氏(維新) 河野談話はどういう経緯でできたのか。
石原氏 内閣外政審議室が中心になって各省に資料調査を要請し、加藤(紘一)官房長官が結果を発表した。慰安所の設置や慰安婦の輸送、衛生管理など、慰安所の存在を前提とする通達などの文書はあったが、女性たちを強制的に従事させるというものは発見できなかった。官房長官が河野さんに代わってからも米国の図書館まで行って調べたが、女性たちを強制的に集めるということを裏付ける客観的なデータは見つからなかった。最終的に日韓両国の将来のため話を聞くことで事態の打開になるのであればということで、16人の慰安婦とされた方々からヒアリングした。証言の裏付け調査は行われていない。
山田氏 強制を認めれば未来志向で日韓関係がよくなる、ということが韓国側からあって談話がまとめられたと考えるが、そういう話はあったのか。
石原氏 証言の結果として心証をもとに河野談話は作成され たが、談話が出た後、韓国側はこれで過去の問題は一応決着したという姿勢で、韓国政府がこの問題を再び提起することはしばらくなかった。そういう効果を持ったと思う。作成過程で意見のすり合わせは当然行ったことは推定されるが、私自身はタッチしていないので確認できない。
山田氏 河野談話が結果的に韓国に利用されていることをどう受け止めるか。
石原氏 最近に至って韓国政府自身がこれを再び提起する状況を見ていて、当時の日本政府の善意が生かされていない、ということで非常に残念に思う。
山田氏 河野談話は日本の官憲が強制連行したと認めたものではない、ということでよいか。
石原氏 主として募集は業者が行い、業者の募集の過程で官憲や軍がかかわった可能性があるという表現だ。政府や日本軍の直接の指示で募集したということを認めたわけではない。
菅宣房長官 内閣としてはこの問題を政治問題、外交問題にさせるべきではないとの考えを持っている。内外の歴史学者の手で、さまざまな研究も行われている。学術的観点からさらなる検討が重ねられることが望ましい。
山田氏 (慰安婦証言の)報告書を公開すべきだ。
菅氏 聞き取りは非公開を条件に行った。
山田氏 非公開でどうやって検証するのか。
菅氏 提出方法については、機密の扱いの中で、どうできるか検討したい。
山田氏 政府内にも検証チームを作るべきだ。
菅氏 機密を保持する中で検討したい。
唯一の資料 公開必須
いわゆる従軍慰安婦問題で「河野談話」作成の当事者だった石原信雄・元官房副長官が証言した。
主なポイントは、①官憲の直接の関与を示す資料は見つ
からなかった②韓国政府が用意した元慰安婦16人の証言に
基づいて談話を作成した③証言の裏付け調査は行わなかっ
た④談話の文言は韓国政府と意見のすり合わせ」を行っ
たと推定されるにーというもので、河野談話の文言作成で
②の証言が唯】の根拠になったことが、改めて明確になっ
た。
河野談話が原因で「日本軍が強制的に若い女性たちを性奴隷にした」 (2007年の米下院決議)という形で世界に受け止められ、「反日」プロパガンダ(政治宣伝)に悪用され続けていることを思えば、菅宣房長官が言うように、歴史学者による客観的かつ冷静な検証が強く求められる。 だが、1990年代当時の政府の調査でも物的資料が見つからなかった以上、歴史学者による検証には、②の証言をまとめた政府の非公開資料を公にすることが欠かせない。
政府は非公開の理由について、当時の韓国政府と非公開
を約束したことを挙げるが、その韓国政府慰安婦問題を
「再び提起」して「当時の日本政府の善意が生かされてい
ない」 (石原氏)ことはどう考えるのか。
現在も存命の元慰安婦の名前は伏せるなどプライバシー
に一定の配慮をしつつ、資料そのものは公開すべきではな
いか。
-加えて④の「意見のすり合わせ」の実態も解明する必要
がある。当時の谷野作太郎・内閣外政審議室長ら直接の関係者からも証言を得るなどして、慰安婦問題は歴史の検証に委ねるべきだ。それが、いつまでも政治・外交問題の材料にされている慰安婦問題に決着を図る近道である。 (十郎浩史)
※河野談話に関する石原証言のポイント
1・各省に資料調査を要請したが、強制的に慰安婦を募集したことを裏付ける資料は見つからなかった
2・16人の元慰安婦をヒアリングし、証言の結果として心証をもとに河野談話を作成した。証言の裏付け調査は行われていない
3・作成の過程で(韓国側と)意見のすり合わせは当然行ったと推定される 4.慰安婦の募集は主として業者が行った。河野談話でも、政府や日本車の直接の指示で募集したと認めたわけではない
河野洋平宮房長官談話
いわゆる従軍慰安婦問題で日韓関係が悪化したため、1993年8月4日に当時の官房長官が発表した談話。慰安婦募集について「本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあった」と記し、日本政府が強制連行を認めたかのような誤解を広めた。政府は2007年3月になって、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とする公式見解(答弁書)を閣議決定している。
衆院予算委で参考人とし
て答弁する石原元官房副長官(20日午後、国会で)
=吉岡毅撮影