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© JBpress 提供
(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
本当にクリスマスシーズンなのだろうか。ソウルの巷を歩いていると、そんな疑念にとらわれる。
もともとクリスマスでそんなに騒ぐ国ではなかったが、この5年くらいは12月になっても普段と変わらず、クリスマスの気配はほとんど感じられない。
韓国では旧正月を祝うので1月1日へのカウントダウンもそんなに大きな意味を持つわけではないし、儒教のお国柄ということもあり、クリスマスを祝うなんて戦後になってアメリカあたりから入ってきたのか、それとも隣の日本でクリスマス商戦なんて言ってずいぶん百貨店が盛況だったから、それをちょっと真似しただけというところもあるのかもしれない。
クリスチャンが宗派は関係なく人口の3割にのぼり、仏教の2割強を凌いでもっとも多くの信仰を集めているのだから、もう少しクリスマスフィーバーが目に飛び込んできても良さそうなものだ。私が韓国に移住してきたときには、ソウル旧市街地にある鍾路と呼ばれる通りや江南などでは、確かにクリスマスのデコレーションが否が応でも目に飛び込んできた。しかもそれはクリスマスが終わって新年を迎え、さらに旧正月を迎えるまでの一月半以上にわたり長々と続いていて、一緒に韓国語を勉強しているクラスメイトと、「一体いつまでやってるんだろうね」と話題にしていたほどだ。
そのピークは2006年頃だっただろうか。それから次第に控えめになって、今ではそんなものを見つけるのが難しいほど、小ざっぱりした12月を迎えている。
その理由にはいろいろあるだろうが、2007年にはリーマンショックがあったわけだから、景気後退もあるのだろう。
クリスマスの前に期末テスト
とはいえ、現代っ子は楽しいこと好きというのは韓国でも日本でも同じで、街中が寂しかろうと、彼らは彼らなりにクリスマスを楽しんでいる。私の在職しているところは女子大だから、学生たちは毎年クリスマスが迫ってくると、どうやらソワソワしてくるらしい。教室に入ると、黒板にはクリスマスツリーの絵が大きく描いてあったりすることもある。授業の時間を使ってクリスマスパーティーをしようというのだが、こんなオヤジと騒いだところで、楽しくもなかろう。
が、韓国の大学で教える身としては、そうした学生の気持ちもよくわかる。
この記事がアップされる頃はクリスマスの前後だろうが、執筆している今は学期末にあたる。日本と違って1つの学期に中間テストと期末テストがあって、これが、日本から見るとなかなかシビアなのだ。
韓国は日本以上に学歴社会と言われる。実際にそのとおりで、たとえば出身大学だけでなく、大学での成績も就職にかなり影響すると言われる。採用する側は、履歴書と大学での成績証明書を並べて、その応募者がどのような勉強を大学時代にしてきたかを吟味する。
中間テストの場合は30点満点だが、期末テストの場合は40点満点。これに出席・態度の点数を合わせた総合点で順位を争うことになる。
重要なのは、相対評価で最終的にランク付けされるということだ。一番上のランクである「A+」と「A」、そしてその下のランクの「B+」と「B」をもらうことができる学生の割合の上限がそれぞれ決まっているのだ。この上限設定は大学によって違うらしいが、A以上の学生は受講者の35%前後で設定されているようだ。
上限が35%で設定されていると、まず総合点で90点以上をとり、さらに上位30%に入らないといけない。だから、総合点が90点以上であってもAがもらえないこともある。私の講義では、総合点がだいたい93点以上だとAになれる。92点だと、場合によってはB+に降格させられてしまう。
不合格だと「F」がつき、これだと単位がもらえない。単位をもらうには合計点が60点以上をとらなければならず、下からD、D+(65点以上)、C(70点以上)、C+(75点以上)と5点おきにランクが上がり、95点以上だとA+のランク付けされる。
A+やAなどの成績ランクには、それぞれに「学点」と呼ばれる点数が割り当てられている。A+の学点は4.5点で、Aは4点。ランクが1つ下がると0.5点減っていくので、合格最低ランクのDは1.0点ということになる。
こんな学生が本当にいるのかどうかわからないが、もしも卒業の時点で全成績の学点の平均が4.5点だとしよう。その学生は全てA+を取った頑張り屋で、能力もあり、なおかつほぼノーミスの回答を続けてきたということだ。企業が学生を採用するかどうかの判断材料には、この平均学点も含まれる。成績表を眺めて「この学生はCが多いな」とか、どれくらいのランクかを把握するだけではなく、満点の4.5点にどれだけ近いかによって、その人が学生時代に一生懸命勉学に取り組んだのかどうかを見抜くのだ。
普段はお洒落な学生もスッピンに
だからテスト期間は、学生たちにしてみれば良い成績を取って自分の道を開いていくための一大イベント週間である。教室は異様な雰囲気に包まれ、勉強に根を詰めすぎてやつれた学生がずらりと並ぶ。それはそうだ。連日3~4時間睡眠でこの1週間を乗り切る学生もいるのだから。今日も期末テストの監督をやってきたが、「うー、気持ち悪い」と言って退出していった学生もいた。
普段はお洒落に余念のない女子学生も、テスト期間中だけは化粧の時間も惜しんでスッピン勝負だ。もちろんそれ自体は悪いことではない。ただスッピンで来る時は、帽子やフードを深々とかぶってマスクまでしてくるものだから、誰が座っているのかわからない。本人確認も一苦労だ。それは今私が在職している女子大であろうが、共学であろうが、どうやらそんなに大きく変わるものではないらしい。あくまでも人づてに聞いた話だが・・・。
大学側も全面的に学生をバックアップする。片道1時間半以上かけて通う学生も多く、彼女たちはテスト週間になると朝5時半に起きなければならない。そういう学生たちのために、図書館は夜通し開放される。勉強のついでに寝泊まりまでできるのだ。だが、なかには近くに座っていた学生がガサゴソとうるさくて、よく眠れないまま朝を迎えてしまい、その結果、ボロボロになってテストを受けたという学生もいる。やはり家で寝るのが、健康と成績のためなのだ。私はそう学生に言い聞かせるようにしている。
テストが終わると今度は点数に一喜一憂し、採点・評価の妥当性に敏感になる。特に中間テストの点数は、次の期末へつながるものなので、どこを間違えたかを確認しておくのはもちろん、採点ミスなどもあれば修正してもらい、点数を上げられるものなら上げておいたほうがいいのだ。たまに自分の採点ミスも見つけてもらえるから良いのだが、その様は大卒就職率の高い日本からすると異様に見えてしまうだろう。実際に私も、最初の頃はずいぶんと理解に苦しんだのだ。
私の場合は、学生が採点結果を確認したいというときには研究室まで来てもらうことにしている。研究室は講義室からずいぶん離れているが、それでも1学年120名ほどいるなかで2割弱くらいの学生が訪ねてくる。
また、期末テストの成績が出て学期が終わったあとも、成績に納得できない学生は担当講師に連絡できるようになっている。私も学期の終わりに必ず何通かそういったメールを受け取るが、どうしてその成績ランクになったのかをきちんと説明するようにしている。
正直なところ、こういう作業は手間がかかる。だが、成績が相対評価なのでせっかく取った点数を無碍に削られてしまうこともあるわけだし、また、そうやって出された学点が就職活動に影響するので、成績について学生が疑問を呈したり意見するというのは、彼らの重要な権利だと思っている。
もちろん学生たちが将来の職に就くためには、学校の成績だけが全てではない。いわゆる「手に職がある」ことを証明するため、様々な資格を取ることも、大学の成績に負けず劣らず必要だ。そうやって学生たちはあたふたと将来のための「準備」に追われる毎日を送っていることを付け加えておこう。
熾烈なテストを乗り越えての笑顔
先日見た2つのニュースが印象的だった。韓国の若者のうち、7.5割ほどが韓国を脱出して海外に住みたいという願望を持っているという。その一方で、韓国人全体のうち、「人生に満足している」「仕事にやりがいを感じている」と答えた人は、どちらも6割以上いる。若者は海外に逃げ出したいのだが、年齢を重ねると収入がそれなりに安定してきて、韓国は住みやすいということなのだろう。
クリスマスから年末年始にかけて、ソウルをはじめ韓国を訪れる日本人は相変わらず多いことだろう。そのころには学生たちはすでに冬休みに突入して、楽しそうな表情で街を歩き、コーヒーショップで友人たちとの会話に花開かせていることだろう。ソウル市内でもスタイリッシュなカフェが至るところにあり、学生たちもそういうところを好む。
韓国に興味をもった理由が韓流であれドラマであれ、どちらにしてもエンタメであり、その華やかで楽しげな世界は今のソウルを歩く若者の雰囲気と重なる。だが、その彼らは、実はその数週間前までは、熾烈なテスト週間を送っていたのだ。それも自分たちの将来のためではあるのだが、その熾烈さを乗り越えての笑顔であることを、心に留めておいていただければありがたい。
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