写真・磐城炭坑(日本鉱夫組合)労働争議1927年2月
1927年労働争議の統計 1927年の労働運動(読書メモ)
参照
「日本労働年鑑第9集/1928年版」 大原社研編
「社会・労働運動大年表Ⅰ」大原社研編 労働旬報社
「日本労働組合評議会の研究」伊藤晃 社会評論社
1、田中内閣の労働運動への弾圧
日本労働年鑑第9集は、1927年の労働者運動を、政府の圧迫と労働戦線の分裂にもかかわらず「組織労働者の数量的増大、御用組合の階級的組合への発展、中間階級者の意識的分子の無産階級への接近、婦人労働者及び職業婦人へのへの階級的意識の漸次的浸透は、時代の趨向(すうこう)として看過することはできない」と書いている。
田中内閣は、国内の中国侵略に反対する対支非干渉運動に対し容赦ない弾圧をした。労働運動、農民運動にも残酷な暴圧を加えてきた。労働争議による「犯罪検挙者」は1925年331人、26年993人、27年710人となっている。争議による解雇者は、1925年7,210人、26年10,112人、27年9,324人である。そのため1927年と28年は26年と比べてストライキや怠業の件数、参加人数もかなり減少している。その反面ストライキ日数は倍増した。ひとたび立ち上がった時は、労働者が頑強に抵抗し闘い続けていることを示している。 (支配者側の苛烈・非道な弾圧は、翌年の1928年3.15事件、さらに1929年の4.16事件へと絶え間なくエスカレートして行く。)
2、労働争議とスト件数
1927年度の労働争議件数は575件。工場労働者の争議は435件で、そのうち染・織工業は118件が首位を占め、次いで金属工業114件である。ストライキ件数は以下の通り。
1926年 スト件数495 スト参加者67,234人
27 383 43,337人
28 393 43,337人
29 571 77,281人
30 901 79,824人
ストライキ損失日数
1926年 698,071日
1927年 1,177,352日
3、先輩労働者の奮闘
先輩労働者は政府・官憲の不当弾圧・検挙の弾圧にあいながら、中国革命を支持し中国侵略反対の運動を起こそうと果敢に奮闘した。また職場ではストライキ日数の倍増が示す通り、戦前最長のストライキである野田醤油争議や小樽ゼネストなど歴史的争議を激しく闘った。
4、争議の原因
資本家からの攻撃 328件(57.0%)
労働者側の要求 247件(43.0%)
資本家からの攻撃は、解雇(13.6%)、賃下げ(17.6%)、組合つぶし攻撃(7.1%)、工場閉鎖(5.4%)、賃金不払い(4.9%)等である。
労働者側の要求は、待遇改善要求(15.7%)、賃金値上(15.0%)が多く、その他解雇手当要求、退職手当制度制定要求、健康保険問題等である。
5、争議の闘争手段
争議の闘争手段は、ストライキが383件、続いて怠業69件、示威行動139件で、ストライキが最も多く64.5%を占めている。
6、会社・官憲の争議弾圧・対策
会社の争議に対する弾圧・対策は、解雇(9,324人)が最も多く、工場閉鎖がこれに次ぐ。官憲の労働争議による検挙数は710名である。
7、争議結果
「妥協」が最も多く全争議の35.5%で、資本家側有利の解決が21.6%である。労働者側に有利の解決は、工場工業の争議では19.1%(前年21.6%)である。
8、1927年の主な労働争議の業種別一覧、参加者数、所属組合
(染織工場)
東京毛織南千住工業(東京)200人 関東合同
大阪メリヤス工場(大阪)300人 大阪評議会
日本絹糸紡績大宮工場(埼玉)500人 評議会
國武〇工場(福岡)400人 九州合同
倉敷紡績松山工場(愛媛)700人 評議会・労農党
日本原毛会社(東京)200人 関東合同
東京モスリン沼津工場(静岡)300人
東洋モスリン亀戸工場(東京)5,000人 日本紡績
日本紡績橋場工場(東京)4,800人 東京紡績
富士瓦斯小名木川工場(東京)1,000人 日本紡績
大阪メリヤス晒工(大阪)2,000人 総聯合
山一林組製糸場(長野)1,100人 総同盟
富士紡本庄工場(埼玉)1,000人 日本紡績
中央毛織工場(岐阜)300人 総同盟
野村製糸工場(愛媛)200人
東洋紡四貫島工場(大阪)2,000人 総同盟
丸和人絹織物会社(福井)200人 社民党
山保毛織物工場(群馬)200人
(金属工場)
村松時計工場(東京)200人 評議会・関東金属
日本楽器会社(静岡)1,100人 労農同志会
安川電機製作所(福岡)500人 評議会
富士電機会社(神奈川)600人 評議会
小樽地方造船所(北海道)280人 小樽造船
乾鉄線工場(兵庫)400人 組合同盟・評議会
宇佐美自転車工場(愛知)242人
芝浦製作所鶴見工場(神奈川)1,200人 評議会・芝浦労働
横浜フォード工場(神奈川)280人
日本鋼管会社(神奈川)2,000人 総同盟
日立製作所(山口)800人 労友会
池貝鉄工所(東京)269人 自由連合
池貝鉄工所分工場(東京)215人 自由連合
(化学工業)
島田ガラス工場(大阪)250人 総同盟
瀬戸地方陶晝工(愛知)700人 製陶同盟
明石地方製瓦工(兵庫)400人
ライジングサン工場(神奈川)200人 総同盟
帝国マッチ工場(兵庫)300人
(飲食物工場)
野田醤油会社(千葉)1358人 関東醸造
旭ビール吹田工場(大阪)200人 評議会
鹿児島菓子会社(鹿児島)310人 労農党
(雑工場)
洲本貝釦工場(兵庫)400人 向上会
大阪鞄工(大阪)380人 鞄自助会
深川製材所(東京)350人 関東木材
大阪足袋工場(大阪)250人 足袋工
行田足袋工場(埼玉)230人 埼玉合同
(特別工場)
東京電力会社(福島)300人 組合同盟
(沖仕等)
相模運輸荷揚夫(神奈川)250人 総同盟
銀山除雪人夫(北海道)250人
瀬戸町陶器荷造夫(愛知)300人
三井物産石炭沖仕(愛知)200人
長崎合同運送沖仕(長崎)200人 組合同盟
小樽海陸沖仕(北海道)2,000人 小樽合同、農民組合
有馬鉄道人夫(兵庫)1,200人
汐留駅沖仕(東京)400人 組合同盟
高山線鉄道人夫(岐阜)280人
(鉱山)
磐城炭鉱(福島)1039人 鉱夫組合
三井炭坑(福島)560人
萬田炭坑(福岡)500人 鉱夫組合
玉城炭坑(福島)300人 鉱夫組合
猪高村亜炭坑(愛知)460人
(交通)
郵船株式会社司厨部(東京)3200人 郵船司同友会
南海電鉄会社(大阪)2,400人 南海同志会
東京乗合タクシー(東京)350人
丸水電機会社(福岡)300人
札幌電気軌道会社(北海道)260人
王子電車(東京)370人 自治会
堀川運河沖仕(愛知)600人
筏乗り(和歌山)300人
(官公業)
横浜市水道土木(神奈川)
新潟運輸事務所(東京)
東京市土木衛生(東京)464人 従業員組合
函館市給水(北海道)24人
東京市製管工場(東京)150人 従業員組合
東京市清掃(東京)13,000人 従業員組合
横浜市電気局(神奈川) 共和会
横浜市水道(神奈川)300人
名古屋市従(愛知) 中部交通労働組合・評議会
(その他)
大原町漁師(千葉)1,000人
以上