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食卓シリーズ・第12部 価格の向こう側・私たちの生活防衛術<1>買い物実験 いい食材は高くつく?

2018年07月10日 06時07分50秒 | 食卓の向こう側

西日本新聞より
2009年2月18日

食卓シリーズ・第12部 価格の向こう側・私たちの生活防衛術<1>買い物実験 いい食材は高くつく?

 昨年12月に連載した「食卓の向こう側」第12部「価格の向こう側」には、読者から多くの感想が寄せられました。
その声をもとに、パート2の今回は、私たち自身にできる“生活防衛術”を考えます。

   ×    ×

 「生産者の見える食材を扱う生協などを利用しますが、周りに勧めても『高いでしょ?』という反応です」(北九州市小倉南区の34歳女性)

 主婦になり、現在東京で暮らす記者(34)も、その気持ちはよく分かる。
原材料や生産方法にこだわった食材は確かに高い。
例えば米酢。
同じメーカーでも造り方の違いで、180円から890円まで幅がある。
そんな話をしていると、先輩記者がこう言った。

 「高いといっても、1日当たりに換算したら大した額じゃないだろう」

 視点を生産者側に置くと、そうなるのは理解できる。
でも、家計を考えると素直にはうなずけない。
「買うのは一品だけじゃない。食材全体を厳選すれば、食費はかなり上がる」と返した。

 ただ、実際どれほどの差額になるのか、見当がつかない。
そこで実験。
夫婦2人世帯の私自身が1カ月間、極力良質な食材を選び、スーパーで最安値品を買った場合との差額を調べてみた。

 基準は、できる範囲で、有機・無添加・国産原材料のもの。
最寄りのスーパーだけでなく、有機野菜を扱う自然食品店なども利用した。

   ×    ×

記者は、有機中心の買い物とスーパーで最安値品を選んだ買い物の価格差を1カ月間調べてみた=東京

記者は、有機中心の買い物とスーパーで最安値品を選んだ買い物の価格差を1カ月間調べてみた=東京

 野菜については、意外だった。
小松菜一把の差が有機とスーパーの安値品で二円しか違わないなど、思ったより差がないものもあった。
国産の半値の輸入品も多かったが、旬だったレンコンやニラなどは、無農薬の方が安い日もあったほどだ。

 夫婦とも外食はせず、副菜は野菜中心だった1カ月。
消費量が多く、野菜の価格差は1カ月で3000円になったが、1日換算では百円、1人当たり50円の上積みだ。
野菜ジュースを買うより、新鮮で安いともいえる。

 次に調味料。
1カ月間に購入したのは、しょうゆ、だしじょうゆ、油、料理酒、コメみそ、豆みそ。
一キロ198円から1300円まで並ぶみそなど、調味料の値幅の激しさには驚いた。

 実験では“最上級品”と最安品を比べたので、調味料の差額は4000円に。
でも、調味料は一度買うと数カ月は使う。
わが家の消費期間に応じ計算すると、1日当たり計約36円の差になった。

 これを高いと見るか、安いと見るか-。
今や、サプリメントなど健康美容食品市場は2兆円規模となり、1日約180円分の菓子を一家族が買う私たちの暮らしぶり。
そんな現状をみると、命を守る食材は決して高いとは言えないだろう。

   ×    ×

 実験で、いい物が安くつく方法も見えてきた。

 一例がかつお節。
上質の本節は一本が約1600円だったが、スーパーで最も安いカツオパックは一本分と同じ量だと約1900円にもなる。
百グラム千円の有機茶葉も、一晩水に浸せば、500ミリリットル分が25円以下で作れる。

 いい物で安いなら言うことないが、壁となるのが準備の一手間。
長年、食べたい物を食べたい時に…という生活を続けた私は、「事前に削る」「一晩浸す」といった段取りが苦手だ。
割高でも、便利な物を選びたくなる。

 そもそも、実験中に最も「高くついた」と感じたのは、買った野菜を腐らせたときだった。

 いい物を食べていけるかどうかは、「段取り力」「保存の技」の有無も大きいようだ。
同時にそれは、食糧危機が来た場合に身を助けるすべにもなる。
連載では、いろんな実践例を紹介したい。

 



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