天龍寺のある大堰川の北岸から嵐山の風景をじっくり眺めていると、山腹にお堂があることに気づきます。大悲閣千光寺(だいひかくせんこうじ)です。京都の西の絶景スポットとして人気を集めています。
- 大堰川を開削した豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)が江戸時代初めに現在地に移転
- 大堰川を見下ろし、小倉山の奥に比叡山をのぞめる絶景が圧倒的な迫力
- 山の上で撞ける鐘も爽快で大人気
- 大堰川の南岸からは、北岸からは見えない豊かな表情が楽しめる
日本人には案外知られていませんが、近年は外国人観光客にも人気があります。山の上の境内は小さいですが、とても活気があります。
対岸の亀山公園から見える大悲閣
大悲閣とは、嵐山から見える山腹に張り出したお堂の名称です。このお堂がよく知られているため、寺名に堂宇名を加えて呼ばれるようになりました。創建伝説はよくわかっていませんが、鎌倉時代に現在の嵯峨の清凉寺の近くにあったことが伝わっています。
その後荒廃していましたが、角倉了以が保津川・大堰川の掘削工事の犠牲者を弔うため、現在地に移して再興してからが、事実上の寺の歴史の始まりとなります。明治になって寺域を失いながらも細々と存続していましたが、1959(昭和34)年の伊勢湾台風で大きな被害を受けます。
本堂は後に解体され、大悲閣もワイヤーで補強されて絶景の邪魔をするような状態が続きました。2012年になってようやく大悲閣の修理が完了し、美しい絶景が障害物なくのぞめるようになりました。
渡月橋から南岸を歩くとこんな大堰川の表情が見えます。
渡月橋から大堰川を上流に向かって歩く道は、南北両岸にあります。観光施設が数多くあるため人通りがとても多い北岸に比べ、南岸はほとんど人通りがありません。南岸を通って行けるのは大悲閣千光寺とラグジュアリーホテル・星のや京都しかないためです。
南岸から見える小倉山の風光明媚さも、北岸の亀山公園から見える嵐山にまったく引けを取りません。川を進む舟も間近に見え、保津川下りの売り物になっている岩肌がむき出した渓谷美も楽しむことができます。
散策路としては北岸よりも圧倒的に表情が豊かです。南岸には自動販売機すらないですが、こうした体験を求めるファンも少なくありません。人出を気にすることがないため、写真撮影にじっくり腰を押し付けていそしむ人の姿も見かけます。
渡月橋の南端から1kmほど川沿いの道を歩きます。ほとんど起伏はありません。川が近く、水の流れる音も聞こえてきます。水鳥がたくさんいることにも驚きます。喧騒のある北岸ではなかなか気づきません。北岸の道が見えなくなり、川幅が狭くなりだすと白い岩肌が目立つようになります。嵐山でこうした渓谷美が楽しめることも案外知られていません。ほとんど人通りがない絶景空間をほぼ独り占めできます。
大悲閣千光寺は星のやのほぼ真上にあり、星のやから石段と上り坂を一気に上がります。星のやからの絶景も見たいものですが、宿泊者でないと敷地内には立ち入れません。
10分もかからず石段を昇り終えると小さな境内があります。境内には赤い布がかけられた腰掛がたくさん置かれています。標高が高くなるためか、下界より少し温度が低く感じられます。空気もとても新鮮です。上りきった後に息を落ち着かせるには絶好の休憩スペースになります。
鐘楼から見える絶景も見事です。鐘を撞くと、大きな青空に音色が拡がっていく余韻がたまりません。ここでしか体験できない爽快な鐘突きです。仮本堂では本尊の千手観音と角倉了以像が祀られています。黄檗宗の寺なので、巨大な開梆(かいぱん、木魚の原型になった魚の彫刻)もあります。
観音堂とも呼ばれる大悲閣には靴を脱いで上がり、座って絶景を楽しみます。開け放たれた窓枠が額縁のようになって、嵐山の緑を生き生きと輝かせています。双眼鏡も貸してくれます。仁和寺の五重塔の奥の高い山は比叡山です。時間が過ぎるのを本当に忘れてしまいます。
大悲閣から見える仁和寺の五重塔
大悲閣千光寺には冬の晴天の午前中に訪れることをおすすめします。空気が最も綺麗で、京都タワーなど様々なランドマークを楽しめる確率が高いからです。京都の新しい魅力を発見した気分になれること間違いなしです。
大堰川沿いの案内看板、境内の雰囲気がよく表れている
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
読者層を絞った京都本が充実してきました
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大悲閣千光寺
【公式サイト】 http://daihikaku.jp
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
◆おすすめ交通機関◆
JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車、南口から徒歩40分
京福電鉄・嵐山本線(嵐電、らんでん)「嵐山」駅下車、徒歩35分
阪急電鉄・嵐山線「嵐山」駅下車、徒歩35分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:60分
京都駅→JR嵯峨野線→嵯峨嵐山駅
【公式サイト】 アクセス案内
※途中に急な上り坂と石段があります。歩きやすい靴でお出かけください。
※この施設には徒歩でしか行くことができません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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