日本の大規模寺院の多くが文化財を保管・展示する博物館施設を持っています。高野山のそれは霊宝館(れいほうかん)と呼ばれ、質量ともにきわめて充実した博物館です。壇上伽藍のすぐ南側にあります。
高野山に117ある寺院が持つ文化財を受け入れ続けており、50,000点にも上ります。高野山にある美術工芸品の指定文化財のほとんどは霊宝館にあります。国宝は21件、重文は142件、この数もお寺の国指定文化財数としては日本トップクラスです。
霊宝館の玄関
寺の博物館は開館期間が春秋などに限定されているところも少なくないですが、ここは通年開館です。ただ通年展示されているのは、それに耐えられる一部の仏像などのみで、入れ替えながらの展示となります。公式サイトに詳しい展示リストが掲載されています。
【公式サイトの現在の展示リスト】 平成30年春期企画展「室町時代の高野山」
【公式サイトの現在の展示リスト】 平成30年3月30日からの常設展
霊宝館の開館は1921(大正10)年と古く、開館時に建設された本館は日本最古の木造博物館建築として、登録有形文化財として指定されています。博物館の玄関も開館当初のもので、大正時代の和洋折衷を感じさせるデザインです。特別な空間に向かうワクワク感を刺激してくれます。
チケット購入後は新館の常設展示を見ます。快慶作の四天王立像が出迎えてくれます。四天王は快慶のモチーフとしては希少です。静寂な表情が美しい快慶得意の阿弥陀如来とは異なり、仏教の守護神である四天王は憤怒の表情をします。そんな躍動感が必要な憤怒の表情の中にも、快慶らしい洗練されたトーンを感じることができます。運慶が得意の圧巻のリアリズム・トーンとは異なる、快慶らしい四天王の傑作です。
【公式サイトの画像】 快慶作・四天王立像
続いて年4回行われる特別展(もしくは企画展、大宝蔵展)の部屋と、本館の常設展示を見ます。年4回行われる特別展では国宝・重文が目白押しで、高野山が1,200年に渡って築いてきた文化の質の高さに圧倒されます。特別展のテーマに関わらず、いつ見ても十分に満足できるほど収蔵品の質は高いものがあります。
行くぜ!コウヤサン!
毎年夏もしくは秋に開催される「大宝蔵展」と名付けられた特別展は、特に多数の国宝・重文が出てくることで知られます。今年2018年の大宝蔵展は、7月14日から始まる「高野山の名宝 “もののふ”と高野山」です。教科書で見た記憶のある武田信玄やお市の方の肖像画をはじめ、国宝・五大力菩薩が出てきます。
高野山へは京阪神からでも旅行に行くような感覚になりますが、わざわざ訪れる価値が充分にあります。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
高野山の魅力を108のキーワードに集約
高野山 霊宝館
http://www.reihokan.or.jp/
原則休館日:年末年始
※常時公開されていない所蔵品があります。
おすすめ交通機関:高野山内路線バス「霊宝館前バス停」下車、徒歩0分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間30分
JR大阪駅→メトロ御堂筋線→難波駅→南海高野線→極楽橋駅→高野山ケーブル→高野山駅→高野山内路線バス→霊宝館前バス停
公式サイトのアクセス案内
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