比叡山の麓、坂本にある日吉大社(ひよしたいしゃ)は、全国の日吉・日枝・山王神社の総本宮です。中世には延暦寺の鎮守として絶大な勢力を誇り、天台宗と共に日吉社も全国に広まりました。
境内に数あるお社を巡りながら散策すると、四季を通じて美しい清流と森の緑が楽しめます。参拝者は神の使いである猿に随所で迎えられ、厄除けや必勝祈願のご加護をいただけます。国宝の本殿や山王鳥居など、日本の神社建築の中でもとても個性のある“美観”も見逃せません。
清流あっての日吉大社(走井橋)
全国の日吉神社の読み方には「ひよし/ひえ」の両方があります。日枝神社は「ひえ」と読みます。古いのは「ひえ」の方で、古代に比叡山のことを日枝の山と呼んでいたことに由来します。平安時代になって縁起の良い「日吉」の字も使うようになります。日吉大社も戦前までは日吉神社(ひえじんじゃ)と呼ばれていました。
日吉大社は飛鳥時代以前から、現在の東本宮の祭神である比叡山の神を祀っていました。一方の西本宮の祭神は、天智天皇が大津京に遷都した際、都の守護神として大和国の大神神社から勧請したものです。
平安京遷都後は都の西北に位置する鬼門として崇敬を集めるようになります。最澄が延暦寺を建立すると、延暦寺の鎮守社として山王権現(さんのうごんげん)と呼ばれるようになります。天台宗の教えと神仏習合して一体化し、延暦寺の僧兵と共に都に神輿を担ぎだして強訴するほど、強大な勢力を誇りました。
山王鳥居
鳥居の上に三角形がのっかった山王鳥居は、神仏習合の名残を伝える日吉大社のシンボルです。両手で合掌している様子を表しており、ここにしかない特別なパワースポットに入っていくことを参拝者に悟らせます。
比叡山には元来、猿が多く生息していたことから、神の使いである神猿(まさる)としてあがめるようになりました。「まさる」は「魔が去る」「勝る」に通じるようにつけられた名前です。縁起物やお守りもたくさん販売されています。オブジェとして癒されるデザインがおすすめです。
【公式サイト】 授与品
西本宮楼門の神猿
日吉大社は織田信長の比叡山焼討の際に全焼しており、現在の建物のほとんどは豊臣秀吉によって再建されたものです。秀吉の幼名は「日吉」、あだ名は「猿」、秀吉が特別な縁を感じたことは間違いないでしょう。
重文の西本宮楼門をくぐり、拝殿で参拝をした先に、国宝の本殿があります。正面にはよくあるように庇が長く伸びていますが、背面は庇がカットされています。日吉造(ひえづくり)と呼ばれる独特の建築様式です。目立たない部分が“合理的に処理されている”ところが、どこか日本的らしくなく、逆に興味深いものがあります。
西本宮から東本宮にある参道にも森のイオンがあふれています。日吉大社の創建時の神である大山咋神(おおやまくいのかみ)が祀られた東本宮の本殿も国宝です。現在の日吉大社は「大宮」と呼ばれていた西本宮があたかも目立っていますが、歴史的には東本宮が“先輩”です。東京・永田町の日枝神社など、全国の日吉社は大山咋神が分祀されたものです。
東本宮にも足を運ぶことで、日吉社の森の美しさの全貌がわかります。参拝ルートの最後に渡る「二宮橋」から清流を見ると「来てよかった」と実感します。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
みやこ人と魔界の千年の付き合いを一望
日吉大社
http://hiyoshitaisha.jp/
原則休館日:なし
開館(拝観)受付時間:9:00~16:30
おすすめ交通機関:
京阪石山坂本線「坂本比叡山口」駅下車、徒歩10分
JR湖西線「比叡山坂本」駅下車、徒歩20分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40分
京都駅→JR湖西線→比叡山坂本駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。
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