私のつれづれ草子

書き手はいささかネガティブです。
夢や希望、癒し、活力を求められる方の深入りはお薦めしません。

老いるということ

2010-05-12 | 3老いる
いよいよ逃れ得なくなって、先延ばしにしていた鬼門の整理に手をつけた。

早朝、ラッシュに逆行して郊外へ出向き、埃とアレルゲンにまみれた古屋のなかでひたすら作業する。

1~2時間が限度なので、お昼は外でおうどん定食…なんてお手軽でメタボ志向の食事が続いているのだが、今日はそのおうどん屋さんでちょっとした事件に遭遇した。

商売上手なそのおうどん屋さんの駐車場は、お昼になると常にかなりの混雑となる。

車を誘導してくれる熟練のおじさんがいつも2~3人いて、その指示に従えば間違えはないのだが、私の前に駐車場に入った軽ワゴンの爺様が、頭から駐車場隅の物置スペースにつっこみ「ガシャン、ギギギッ」と強烈な音を立てた。

普通であれば運転席から飛び出して、状況を確認するのだと思うのだが、「ギィギィ」音を響かせつつ後退して、そのまま駐車枠に入れ込もうとしている。

停止位置も怪しく、整理員のおじさんがとんでくる。

物置の扉と柱、それに爺様のワゴン車もしたたか傷ついているが、爺様は耳が遠いのかまるで慌てた風がない。

泰然と下車して、辺りの騒然とした様子に動じることなく漸く事態を確認する。

頭の具合から70代の爺様と思われるが、痩せた長身にジーンズジャケットを羽織り、大きなトートバックを肩にかけていて、昔のモダンボーイ風。

特異だったのは、その顔が無表情であること。
爺様は終始無言で、チラリともその顔に感情が現れることは無い。

「何だか変だよね」と思いつつ、私はその場をやり過ごして先に店舗に入ったのだが、程なく件の爺様が無表情のまま私の斜め前の席につき、平然とうどん定食を注文し、坦々と食べ始めた。

とにかく、無表情なのだ。
動揺も、戸惑いも全くうかがえない。

ちらちらと爺様の様子をうかがったが、とうとうその顔に感情らしきものを読み取ることは出来なかった。

老いるとはこういうことか。
私の父だったらもっとうろたえたろうな…と思いつつ、とてもとても太刀打ちできないタイプを久々に見つけたと感じたのだった。

…それにしても、破損の手当てはどうつけることになったのだろう。
老舗うどん屋の対応が少なからず気になる。

そして何よりも、高齢者ドライバー恐ろし…としみじみ感じたのだった。
大きな事故をあの爺様引き起こさなければよいのだが。
無表情なドライバーの安全意識は、きっと低いはずだから。
コメント
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