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そんな夫に気がつかぬ女房ではない。今度は芯から怒り狂った。なぜなら人々のうわさからの嫉妬ではなく、明かに夫の心のうちを見たからだ。
女房は今度はプライドにかけても相手の女を半殺しにしてやると、鬼夜叉そのものだった。
一見、ほっそりとした女は日々の仕事で、身軽で体力もあり女房よりはるかに強いからだをしていた。
女房は負けた。
相手を引っかき、衣をずたずたし辱めてやるつもりが、繰り出すたびに女にふわりと逃げられ、だだ宙を飛ぶだけで疲れ果ててしまい、髪ふりみだし地にへたばってしまった。
惨敗の悔しさと、世間の物笑いになることがよぎり、泣き崩れてしまったが、誰も手をさしのべてくれなかった。
壁の隙間から一部始終を見ていた男は、意外な展開におどろき・よろこび・おののいた。それからの日々を思うだに恐ろしくなってしまった。
いっそうのこと、妻と手を切る好機だと思ったのだが・・・。
そんな夫に気がつかぬ女房ではない。今度は芯から怒り狂った。なぜなら人々のうわさからの嫉妬ではなく、明かに夫の心のうちを見たからだ。
女房は今度はプライドにかけても相手の女を半殺しにしてやると、鬼夜叉そのものだった。
一見、ほっそりとした女は日々の仕事で、身軽で体力もあり女房よりはるかに強いからだをしていた。
女房は負けた。
相手を引っかき、衣をずたずたし辱めてやるつもりが、繰り出すたびに女にふわりと逃げられ、だだ宙を飛ぶだけで疲れ果ててしまい、髪ふりみだし地にへたばってしまった。
惨敗の悔しさと、世間の物笑いになることがよぎり、泣き崩れてしまったが、誰も手をさしのべてくれなかった。
壁の隙間から一部始終を見ていた男は、意外な展開におどろき・よろこび・おののいた。それからの日々を思うだに恐ろしくなってしまった。
いっそうのこと、妻と手を切る好機だと思ったのだが・・・。