棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

つれづれくさ-すぎたるは

2009-03-10 09:25:17 | 大人の童話
11
男は恐妻の虐げられからすこしは解放されると、仕事もできるようになった。
極度に気が弱い男ではあったが、愛される性格の上、能力はあったので、たちまち花開いてきた。
運にも恵まれてきて、小領地ながら国司に任じられた。

男はどうどうと女を迎えにゆき、「夫婦かため式」を盛大におこない、共に任地へと旅立っていった。
もと女房はあいかわらず優男をしたがえ、日夜楽しんでいた。

作者の言葉  中島敦著「夫婦」を下地に創作した。
嫉妬ってヤツは、言い換えればプライドに傷がついたと怒るエゴともいえる。嫉妬するうちはまだいいのかもしれないが、過ぎれば碌なことにならない。
この話、みんな万々歳なのである。


つれづれくさ-10-すぎたるは

2009-03-09 07:46:28 | 大人の童話
10
一方、女房は己でも予期もしなかった結末に、気も狂わんばかりであったが、本来多情な女は、未婚の青年を集めては以前よりも痴情にあけくれしていた。
衆人も、気の弱かった男への嫉妬狂乱だからこそ面白がったのであるが、いつの間にか、話題にも上らなくなってしまった。

賢い女はそのまま男を引き入れることはなかった。
妻である女房のことを思えば、筋道を通さなければ治まりきらぬと覚悟をしていた。
男は妻の絶対専制に耐えながらも、不思議なくらい充実した日々であった。
家柄を盾にした女房の仕返しは、女の家をさらに困窮したが、男の助けもあり耐え忍んでいた。

つれづれくさ-9-すぎたるは

2009-03-08 09:34:10 | 大人の童話
9
そんな夫に気がつかぬ女房ではない。今度は芯から怒り狂った。なぜなら人々のうわさからの嫉妬ではなく、明かに夫の心のうちを見たからだ。
女房は今度はプライドにかけても相手の女を半殺しにしてやると、鬼夜叉そのものだった。
一見、ほっそりとした女は日々の仕事で、身軽で体力もあり女房よりはるかに強いからだをしていた。
女房は負けた。
相手を引っかき、衣をずたずたし辱めてやるつもりが、繰り出すたびに女にふわりと逃げられ、だだ宙を飛ぶだけで疲れ果ててしまい、髪ふりみだし地にへたばってしまった。
惨敗の悔しさと、世間の物笑いになることがよぎり、泣き崩れてしまったが、誰も手をさしのべてくれなかった。

壁の隙間から一部始終を見ていた男は、意外な展開におどろき・よろこび・おののいた。それからの日々を思うだに恐ろしくなってしまった。
いっそうのこと、妻と手を切る好機だと思ったのだが・・・。

温泉・湯あたり

2009-03-08 05:58:54 | 山郷の暮し
昨日「リュウサン遊びに行こう」と、お天道様にはじかれたように、中年チンピラがやってきた。
いつもだったらさっそくイッパイとなるところだが、当節は厳禁。あっちこっちイテーというオッチャンにとって、遊びに行くところとなれば温泉くらい。
山間のラジウム温泉にいき、私は軽く一杯(運転はしません)のあと、久しぶりに小一時間もポチャポチャ。
私は汗だくで上がったあとフラフラときてしまった。そして、手足に強い痙攣状態がつづいてしまった。特に、心拍数がましたわけでもなく、測定はしないが、血圧も激変はなさそうだった。どうも湯あたりということか?初めてのケイケンにオッチャは幾分緊張。
まったく訳がわからないが、昨夜は早々に寝て、今朝は5時から製作にはいっている。そうそう、幾分かさかさしたお肌がしっとりとしています。(キモチワルイーなんていわないでネ)やっぱり温泉は自宅風呂とは大違いです。
アホなオッチャンのお話でございました。
追申--こんな時間の投稿は初めてです。

つれづれくさ-8-すぎたるは

2009-03-07 08:48:02 | 大人の童話
8
あるとき小路を歩いていたかの男。破れ築地にあばら家と化した屋敷から、じーと自分を見つめる目に気がついた。
いつもだったらあわてて目を伏せてしまうのだが、体中に電撃が走り動けなくなってしまった。そのうえ、それまでに感じたことがない熱いものがこみあげ、呆然としてしまった。
男はそれが何であるのかわからなかった。ただ、破れた築地塀(ついじべい)越に観た女を、もう一度観たいとおもうようになった。
気の弱い男にしたら、用もないのにあの小路をいくことは必死な思いだった。
土塀のおくに優しい女の目があった。かいがいしく働く姿があった。声こそ聞こえなかったが、語り合った気がした。
なかむつましくなるのに、さほどの時はかからなかった。
男は心から安らぎをおぼえ、「オレはこの女のためならば、なんとでもする」と思ったが・・

霧が包む夜の谷

2009-03-06 20:30:38 | 山郷の暮し
夜明けから一日よく降りました。
昨夜から賢犬サクラのダーリンをあずかっており、目があう度に散歩にいこうと訴えます。
いつもの散歩道の、真冬の間涸れていた小さな沢に、濁り水が勢いよく流れ落ちていました。雪解け水とちがって、多分明日には涸れてしまうのでしょう。
夕刻にはオレンジ色のお天道様も射し、ホワーーと蒸気が沸き立ちました。
今、谷は深い霧に包まれ、最前通り過ぎていった救急車の赤いランプが、一時霧を赤色に染めながら、トンネルに向かっていきました。
大きな事故でないことを願いますが、車の通行がピタリと止まってしまいました。
谷は耳鳴りがするほど静かなんですけど、交通ストップとなるといつしかびっしりと車が連なってしまいます。
安全運転を心がけて下さい。

つれづれくさ-6・7すぎたるは

2009-03-06 08:10:03 | 大人の童話
6
衆人はあきやすい。
女の痴話喧嘩も以前のような関心をしめさなくなったてしまった。
気の弱い夫は、決して自分から望んで他の女を求めようなどと思いもしなかった。
そればかりか、妻の浮気癖は自分が至らないのだと思っていた。
いつものように、下を向いたまま大道をまるで影のように歩む男に、密かに思いをよせている美しい女がいた。
7
没落貴族として生まれた女は、幼い頃から働き者で、器量もよく賢かった。
妻にほしいという話は多くあったが、家柄を狙ってのものであった。両親の説得にも頸を縦にせず、黙してしまうのであった。
妻として理想的な女子が、男におもいをよせているなどと誰が思いつこうか。

政治献金問題

2009-03-05 08:33:48 | チョット一言
現在の長野県知事は、一時全国的に有名になった田中康夫を破って当選した、バリバリの自民党の老議員。二期目に入っているのか忘れましたが、先日、公設私書が自殺して県内は大騒ぎ。そうです、西村建設からの政治献金のことで、捜査を受けていたらしい。全国ニースで報じられた矢先に、今度の小沢一郎の献金問題。まるで味噌もクソも一緒とも見える、政治と金のもつれあい。本当にイヤになっちゃう。
小沢一郎の記者会見での検察への批判は、彼がかつて自民党・政権の中心(裏世界)にいただけに、アレだけのことをいったのではないだろうか。単に言い逃れだけとも思えない。日本が変わろうとする流れに、水を刺すことにならないことを願う。

つれづれくさ―5―すぎたるは

2009-03-05 08:12:13 | 大人の童話
5
この女は強かった。相手が自分より大おんなであっても、喧嘩なれというか連戦連勝。痴話喧嘩(とはいいきれないが)のベテランである。
気の毒なのは夫で、身に覚えのないことで、妻が衆集での大立ち回りだが、幸いなことに人々は恐妻を持つ男に同情をすればこそ、卑下することはなかった。

今ひとつ不思議と言えば不思議なことだが、喧嘩慣れした格闘ウーマンだが、吹けば飛ぶような優男の夫には、罵詈雑言を浴びせたが手を上げることはなかった。
世間では、あの女は浮気性だが、夫にはべたぼれでなにもしないんだ。と、多少はひいきをしていた。

つれづれくさ-4-過ぎたるは

2009-03-04 08:47:03 | 大人の童話
4
美しい女だけに、大狂乱するうわさはたちまち都中にひろがり、見物したいものだなどと、期待して待っている始末であった。
「おい、あの女に勝てるような女子をめあわせてみよう。そうすればお楽しみテーもんだ」
と、とんでもないことを言いだすやからが出て、実行されてしまった。

まるで祭り芝居をまっているごとく、人々は「どちらが勝つか」などと賭け事にするしまつ。

ryusun

つぶやき

絵本と無縁になった大人に

子供たちに向けたというより、内なるものを呼び覚ます大人への絵本