(骨董市の急須)
何故かものすご~く急須の形に惹かれる
るるです。
やかんも好きだし、アリババの魔法のランプもいいなあ
要するに、取っ手があり、蓋があり、注ぎ口のある形に
心を奪われてしまう、何故なんだろう。
だから食器棚には独身時代からのも含めると
かなり沢山急須がある。
しかしいつも使うのは2つだけで
一番好きだった
独身時代に社内旅行で行った能登で買った急須は
旦那が割ってしまいました
今の一番のお気に入り急須は、確か小石原で買ったもので
これですがな
(我が家愛用の急須)
蓋がやはり割れたので代用品に、ステンレスの小やかんの蓋を使ってる
小やかんは蓋を取ってお湯を沸かす、なぜなら沸騰すると注ぎ口から
ぴゅっぴゅっとお湯が吹き出るからである。
だから蓋はいらないから一石二鳥?な代用蓋となった
しかし純和風の急須が、なんかこの蓋で魔法のランプになってしまう
結局陶器食器類は、お気に入りの物から割れていく運命なのである。
もし自分が陶芸家だったら、一生急須という物の形にこだわり続け
自分の究極の急須をなんとか死ぬまでに作るだろうと思う
陶芸には憧れがある、特に薪で窯に火入れをするお仕事
どんどん火が入って温度が上がっていくと
きんきん陶土が喋りだしそうで、一晩中火を見ていたい気がする
るるは一人暮らしの昔、風呂が五右衛門風呂だったと「引越し三昧」
に書いたけど、小さな風呂の焚口の中で燃え盛る火をいつまでも見て
いたら、風呂が熱くなりすぎて、はいれましぇーんという事態になり
水をどんどん入れてようやく入ったら、今度はぬるくなり
「おーい火をくべてくれ~」と風呂の窓から叫んでも
そこはそれ、どこはどれ、一人暮らしのせつなさ寒さ
もう一回服を着て火をくべるか、ぬるい風呂で我慢するか
いっそ、はだかで速攻、薪くべに走るのか
「どうする~どうする~?るる~」の世界だった
話それすぎてますが、いや~それはさておき
急須型の五右衛門風呂とかってないのかな
あったら注ぎ口から、毎日ぴゅっぴゅっとお湯が吹き出るほど
薪をくべてしまうでしょう。
今日の詩
(24歳で夭折された詩人立原道造は
将来有望な建築家としての
人生の始まりに逝ってしまった。)
薊【あざみ】の花のすきな子に
(立原道造)
一 憩【やす】らひ
――薊のすきな子に――
風は 或るとき流れて行つた
絵のやうな うすい緑のなかを、
ひとつのたつたひとつの人の言葉を
はこんで行くと 人は誰でもうけとつた
ありがたうと ほほゑみながら。
開きかけた花のあひだに
色をかへない青い空に
鐘の歌に溢れ 風は澄んでゐた、
気づかはしげな恥らひが、
そのまはりを かろい翼で
にほひながら 羽ばたいてゐた……
何もかも あやまちはなかつた
みな 猟人【かりうど】も盗人もゐなかつた
ひろい風と光の万物の世界であつた。
二 虹の輪
あたたかい香【かを】りがみちて 空から
花を播き散らす少女の天使の掌【てのひら】が
雲のやうにやはらかに 覗いてゐた
おまへは僕に凭【もた】れかかりうつとりとそれを眺めてゐた
夜が来ても 小鳥がうたひ 朝が来れば
叢【くさむら】に露の雫が光つて見えた――真珠や
滑らかな小石や刃金【はがね】の叢に ふたりは
やさしい樹木のやうに腕をからませ をののいてゐた
吹きすぎる風の ほほゑみに 撫でて行く
朝のしめつたその風の……さうして
一日【ひとひ】が明けて行つた 暮れて行つた
おまへの瞳は僕の瞳をうつし そのなかに
もつと遠くの深い空や昼でも見える星のちらつきが
こころよく こよない調べを奏でくりかへしてゐた
三 窓下楽
昨夜は 夜更けて
歩いて 町をさまよつたが
ひとつの窓はとぢられて
あかりは僕からとほかつた
いいや! あかりは僕のそばにゐた
ひとつの窓はとぢられて
かすかな寝息が眠つてゐた
とほい やさしい唄のやう!
こつそりまねてその唄を僕はうたつた
それはたいへんまづかつた
昔の こはれた笛のやう!
僕はあわてて逃げて行つた
あれはたしかにわるかつた
あかりは消えた どこへやら?
四 薄 明
音楽がよくきこえる
だれも聞いてゐないのに
ちひさきフーガが 花のあひだを
草の葉をあひだを 染めてながれる
窓をひらいて 窓にもたれればいい
土の上に影があるのを 眺めればいい
ああ 何もかも美しい! 私の身体の
外に 私を囲んで暖く香【かをり】よくにほふひと
私は ささやく おまへにまた一度
――はかなさよ ああ このひとときとともにとどまれ
うつろふものよ 美しさとともに滅びゆけ!
やまない音楽のなかなのに
小鳥も果実【このみ】も高い空で眠りに就き
影は長く 消えてしまふ――そして 別れる
五 民 謡
――エリザのために
絃【いと】は張られてゐるが もう
誰もがそれから調べを引き出さない
指を触れると 老いたかなしみが
しづかに帰つて来た……小さな歌の器【うつは】
或る日 甘い歌がやどつたその思ひ出に
人はときをりこれを手にとりあげる
弓が誘ふかろい響――それは奏でた
(おお ながいとほいながれるとき)
――昔むかし野ばらが咲いてゐた
野鳩が啼いてゐた……あの頃……
さうしてその歌が人の心にやすむと
時あつて やさしい調べが眼をさます
指を組みあはす 古びた唄のなかに
――水車よ 小川よ おまへは美しかつた