土塊も襤褸も空へ昇り行く:北村虻曳

随想・定型短詩(短歌・俳句・川柳)・写真
2013/11/11開設

研究近況2

2023-09-03 | フォト・エッセイ
<研究近況2>

友人に迫られて自分の若い頃の仕事を読み直しているが、良い結果と思われるものでも、人気のあるものと相手にされないものがある。分かれ目はやはり「読みやすさ」とわかった。

「内容の要約をつけない引用が多い」ものは読みにくい。僕の仕事は分野をまたがっているし、多岐にわたる読者に対して説明しているととても長くなるから、結果を引用している。それが続くと我ながら嫌になる。いや、そもそも証明を理解しないで引用している結果も多くある。(広中平祐さんの特異点解消定理が代表だ。これは読むのが大変で、多くの人が結果だけを用いていると思う。それでもいろいろな話の基礎となる結果だから、とてもよく使われる。)

若いときはこの横着をやると叱られる。たしかに何かを徹底して読む経験は大事だが、何でもそうしていると、記憶力のない僕の場合は何も読了せず、自分の仕事はゼロになっていただろう。

今考える時、できれば参考にする文献は電子ファイルでほしい。検索できるし、レンズを用いなくても老眼にも読めるように拡大できる。しかしむかしは、専用ワープロや電子タイプで直に打上げたから、その時代の自分の結果には原稿の電子ファイルはない。その上、研究費を持たない今の自分にはネット有料文献へのアクセスが苦しい。そこでトランクルームに通って、むかしのコピーをひっくり返している。よく使ったところは汗でひどく変色している。(写真は G. Fischer の Complex analytic geometry への書込)

こうしたやや代数的な分野に近年ご無沙汰している原因は、難しさもあるが、フランスの友人 Guillaume Rond さんの存在が大きい。彼は今は中堅と言うよりリーダーと言ってよいだろう。僕の位数の理論を僕以上に完璧にこなし、残した問題も解決してしまった。僕にはフォローできないが、さらにどんどん間口を広めているようだ。僕の定年頃、彼に任せておけば良いと思ったのだ。

でも陽の目を浴びない自分の結果にも、手を加えてわかりやすくし、なんとか理解されたいものも残っている。もちろん、駄作であまり見たくないものもあることは言うまでもない。
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