メモリー
2019-01-10 | 短詩
メモリー 北村 虻曳
目覚めどき見当識を失ひて捨てきし町を早送りする
サリサリとブレーキかけつつ降りゆく赤錆色の記憶の坂を
散り敷きし紅葉一斉に舞いあがり関東平野に冬が降りたつ
今日の陽が重き地平をこじ開ける散らばる骨は陰影著く
水べりに幼きもの現れて石を投げたりしゃがんでみたり
遠き日に銀木犀の樹皮を縫う黒蟻の列しゃがんで見き
無関心装い近づけばアオサギも首を起こして間合いを測る
尾根先を拓きて作りしわが家の地勢を好み今も鳥寄る
たまさかに二足いただき幾十年歩きつくして宙舞う塵に
たぎりたつ思い次第に冷めゆきて巻雲のこる夕焼けの空
続 2018-2019 歌会「sora」の詠草(一部改) (宙=そら)
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