土塊も襤褸も空へ昇り行く:北村虻曳

随想・定型短詩(短歌・俳句・川柳)・写真
2013/11/11開設

メモリー

2019-01-10 | 短詩

 メモリー         北村 虻曳

目覚めどき見当識を失ひて捨てきし町を早送りする

  サリサリとブレーキかけつつ降りゆく赤錆色の記憶の坂を

散り敷きし紅葉一斉に舞いあがり関東平野に冬が降りたつ

  今日の陽が重き地平をこじ開ける散らばる骨は陰影著く

水べりに幼きもの現れて石を投げたりしゃがんでみたり

遠き日に銀木犀の樹皮を縫う黒蟻の列しゃがんで見き

  無関心装い近づけばアオサギも首を起こして間合いを測る

尾根先を拓きて作りしわが家の地勢を好み今も鳥寄る

  たまさかに二足いただき幾十年歩きつくして宙舞う塵に

たぎりたつ思い次第に冷めゆきて巻雲のこる夕焼けの空                 

       続 2018-2019 歌会「sora」の詠草(一部改)  (宙=そら)


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