土塊も襤褸も空へ昇り行く:北村虻曳

随想・定型短詩(短歌・俳句・川柳)・写真
2013/11/11開設

カラス vs カモメ

2017-12-09 | 随想
小学校の先生が宿直のとき、校舎に迷い込んだフクロウを捕まえ、翌日私達に見せてくれた。そして「今から放す」と言われてみんなで見守ったのである。フクロウは校庭から飛び立ち、山の方を目指した。するとカラスが2羽現れてそれを追った。フクロウは山の樹木の中に降りたようだがカラスも続いた。遠い山でそれ以上のことはわからなかったが、ただでは済まなかったであろう。フクロウを助けて放つ話が、なんとなく後味の悪い結末で解散となった。フクロウは夜になると他の鳥の脅威だからであろう、昼間には他の鳥に見つかるといじめられるようだ。

カラスとトビはよく争うもののようだ。空をとぶトビに2羽のカラスがまとわりついてちょっかいを出している事がしばしばある。空で絡まり落下して中途で離れたのを見たこともある。力は伯仲しているようだ。人間に見えないところではお互いの卵を盗み合っているのではないだろうか。病院で知り合ったある老人は、海の番小屋に勤めていたそうだが、カラスとトビの争いを見ることがその仕事のひとつの楽しみであったと話してくれた。

新聞で見た写真では、ハヤブサが群れ飛ぶカラスの中に突入し1羽をわしづかみにして、騒ぐ他のカラスをものともせず去ったようなことが書いてあった。ネットにはタカのたぐいがカラスを襲うものが多くアップされている。体格の近いタカのたぐいとカラスだが、獲物を掴む脚の爪と力の差があり格が違うようである。中には大きな嘴で逆襲され逃げ出しているタカの動画もあるが。

かって学生を連れて釧路の湿原を車で訪ねたことがある。我々のいる道路から100mほど離れ、平行している道路があったが、そこの路上と電線におびただしい数のカラスとカモメがいた。と言っても、僕にはカモメ類の類別はできていなかったから、ウミネコであったかもしれない。カラスとカモメは混じり合わず静かに何百mか並んでいた。近くにあるタンチョウヅルの保護施設の餌のおこぼれでも狙っていたのだろうか。いやあの数ではありつける数の割合が低くてこれはありそうにない。ごみ処理施設でもあるのだろうか。いつも引き合いに出されることだが、ヒチコックの「鳥」のような迫力で、学生たちに真顔で「車からあまり離れるな」と言ってしまった。

また研究仲間と小樽の水族館に遊びに行ったこともある。付属の食堂で昼のビールを楽しみ、人ずれして窓に来るカラスやカモメに餌をやっていた。悪友のIが思いついて、間に餌をおいて食わせ、餌を置く場所を少しずつずらしてカラスとカモメを徐々に近づくように誘導した。数十センチまで近づいたとき遠慮して逃げたのはカラスであった。この時のカモメはカラスとあまり違わない体格であった。他の観察でもカモメの方が威張っているようである。鳥にかぎらず餌で序列の見当がつく。

内陸にいるのでカモメはあまり見ない。そこで想像でこの強弱を考えてみる。一般に猛禽類は嘴が下方に反っている。これはまずつつくときの衝撃が大きい。また咥えた大きな獲物を力いっぱい引くとき、引っかかりがよくて引裂くことができる。攻撃的にできているのである。普通のカモメでは、下嘴に隠されてこの反りはあまり目立たないが、嘴を開くとカラスよりは反っている。共に雑食ながら、おそらくカラスよりも活きた大きな獲物を捕り慣れているのであろう。従って争えばカラスのダメージが大きそうだ。これがカラスのほうが謙虚な理由と思う。ではなぜカラスは猛禽類であるトビと対等に争うのか。カラスは2羽以上の群れでかかることが多い。またトビの飛行は上昇気流を利用することには巧みだが、空中戦は下手なのではないか。そんなところではないだろうか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 麦の風景、米の風景 | トップ | プログラムとの浅い付き合い »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿