土塊も襤褸も空へ昇り行く:北村虻曳

随想・定型短詩(短歌・俳句・川柳)・写真
2013/11/11開設

天動説・地動説 (九句+九句)

2014-03-25 | 短詩
天動説

土掘って確かめている天動説

かくれんぼみんなそろって神隠し

本物の鬼が現れ缶蹴れず

蟻の宴人が混じって食い食われ

蛇スウェイバックでかわす猫パンチ

畝をうち寄せては螻蛄に容赦なし

深淵に泳いで褌ほどけたり

物乞ふ手なかに伸びくる遠めがね

宙をまひひの字のの字の宇陀の蛇


地動説

白雲と犀は動かず地動説

風よりもうすき色もつ炎をまとい

毛馬の春水の高まるまぼろしを

月の暈背負いて高し陸の船

ろうそくや赤き鱗は石段の

たたみたる傘の拡げる滴領

誘われて見知らぬ街の跨線橋

真夜中の硝子に映る真昼の野

草刈機払へば空に文字が舞ふ


    (螻蛄=ケラ、暈=かさ、陸=おか)

<天動説・地動説> 豈52号(2011)・一部改稿

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2 コメント

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蕪村追慕 (寺岡良信)
2014-03-28 07:08:27
毛馬の春水の高まるまぼろしを

大坂近郊の毛馬村に生まれた蕪村は、関東に下り俳諧と文人画を修得した。浪漫主義とも呼びたい近代的美学が彼の句には顔をのぞかせる。いま自分が聴いているのは、北近江の雪解けで水嵩の増した郷里の川の高鳴りか。遠くまぼろしに烟る野心と郷愁。そこには流浪の哀感さえ流れて、俗塵を離れた詩歌の世界に入ってゆくおののきが心の篋底を濡らしている。
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寺岡さんへ ()
2014-03-29 18:03:21
寺岡さんの詩としての深い読みに驚かされるとともに、くすぐったさもあります。
というのも、私の句には純粋詩性(俳句)と、遊戯性(俳諧)更にはアイロニー(川柳)が混在しているからです。きっと違和をお感じと思います。作品を一緒にまとめるとお互いに壊し合いますが、欲の深い私はどちらも捨てません。
苦肉の策としてわざわざ両者を並べて喧嘩させることをやってます。それが「双対」であり、「天動説・地動説」です。(一部分ですが。)
「草刈機払へば空に文字が舞ふ」は、一つの句の中でそれらがアウフヘーベンされた稀有の例という気がします。以上、私が半端な立場で考えていることの説明です。
しかし一つの立場を徹しなければつかめないものもあります。純粋詩からされる寺岡さんのご教示はそういう意味で大変参考になりました。
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