音信

小池純代の手帖から

日毎の音 蔵 201016

2020-10-15 | 日記
 
  蔵


 エアコンが神で仏が冷蔵庫そんな真夏の二〇〇〇年代


 扉の錆朱さびしゆてならぬ蔵一宇ずつと黙つて路を見てゐる


 蔵の字に「かくす」の読みがあることをよろこぶ隠も匿もわたしも


 所有から離れて売られある本の蔵書印こそゆかしかりけれ


 蔵の壁しんしんとして秋草の繊き影さへ吸ひ込みしかな





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日毎の音 靴 201015

2020-10-15 | 日記

  靴


 茶碗とか小皿が置かれあるやうに華奢なヒールのい並ぶ靴屋


 ウェアすればかさあげさるる心地せる究極の靴オートモビール


 靴脱いで身投げするのはどの国の慣らひなるべし此の世とは靴


 靴はこれ舶来のもの舶来の美的なるものしばしば嗜虐


 大きなる黒の革靴客船に見立て磨きし昭和の子ども






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