読書の森

梯久美子『昭和20年夏、女たちの戦争』その2


米戦闘機B29が編成を組んで東京上空を飛ぶのを近藤富枝は目の当たりに見ている。
死と向かい合わせになっていた。
それでも「なんてB29は美しいんだろう」と思ったと言う。

又、どうせ死ぬなら職場のNHKで死にたいと、空襲警報の出た中で出勤したという。

母も含めて空襲体験者に聞くと、閃光煌めく飛行機は美々しくも見えたそうだ。
恐怖も極限を超えるとそうなるのだろうか?
もっとも、富枝はさらに「私は美しいものが好き」と続けるからかなり吹っ切れた人と思える。

女子アナの先駆者、近藤富枝は平穏な境遇で育った人ではない。
日本橋の大店の主人だった実父が遊興に耽って店が倒産した。その後両親は離婚、富枝は父方の祖父母に育てられた。
祖父母の家から当時として最高教育の女子大に行ったのだから、経済的には恵まれていた。

高等教育を受け実の母と縁が薄い境遇からか、同時代の女性より社会に目覚め物事に一途に進む性格の人のように見える。


先ほど、NHK局内において、彼女は嘘ばかり放送していたと述べたが当時は全くそれを知らなかったようだ。内容の正しさを信じていた。
報道する原稿を、国を担う使命感を持って、正確にそのまま伝えたのである。

彼女に限らず、当時の放送部員の殆ど全てがそうだった。
異議を唱える自由は無かった。

公共放送の職員だから、衣食住は保障されて飢える事は無かったが、ロマンスには全く恵まれていなかった。
言わば恋愛禁止状態だった。

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

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