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3日前に菫が打ったメールは絵の羅列だった。
「🇹🇭🍉🍰🖐」
受け取った長浦和也は友達の衣笠ヨシミにこれを見せた。
「なにこれ?」
「文字通りに読めば良いのさ。
左からタイの国旗、スイカ、ケーキ、手だよね。
つまり助けてだ」
二人は顔を見合わせた。
東菫は共通の友達というより、和也の憧れの女性である。
その和也をヨシミは大好きだ。
せめて友達以上恋人未満の存在でありたい。
つまり和也が菫に接近しない予防線として菫と親しくしている。
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三人とも名門海南高校の一年生。
一見頭が良さそうだ。
しかし、極めて現実問題に弱い。
特に恋の問題には。
東菫はお嬢様である。
金持ちの一人娘で、休日にベンツに乗り、
オメガの時計を持つ。
靴も洋服もオーダーメードだ。
透き通る様に白い肌と円らな瞳、ふっくりした唇、スリムな肢体、長い髪。
絵の様にというと陳腐だが、美しい。
和也もヨシミも中肉中背、利発な目と健康そのものの容姿である。
それなりに好感を持てるのだが、菫と並ぶと王女様とお付きの者という感じになる。
これがヨシミは癪の種だ。
「きっと冗談よ!絵文字だしさ。あの人結構人が悪いし」
ヨシミは笑う。
和也は怒った様な真剣な顔つきになった。
「冗談じゃないから相談してるんだ!なら何故薫は無断欠勤してる。必ずいつも学校に連絡が来てる筈だ」
「何よ、その言い方!和也、薫のなんなのよ!」
ヨシミも怒った調子になる。
「好きなのに自分を無視してる」と言う思いを無理矢理抑えてるので、もどかしくて怒った表現になるのだ。