和也は悪いなと言う表情を浮かべて説明し出した。
実は和也はこのメールを貰った直後に安否を確認するメールを出した。
ところが、それっきり菫のメールは来ない。
和也は不安になって山手の菫の家に駆けつけた。
門は閉まり、二階の菫の部屋のカーテンは厚くかかっている。
「そういう事情ね。でも家族旅行に行ったとか?」
「会社のかき入れ時にかい? 菫は養女に貰われた。実の子じゃない」
「それが何なの?いい洋服着てブランドの時計嵌めて贅沢させて貰って」
「愛情は金で買えない」
和也の声が大きくなった。
ヨシミはしょげた。
「ごめん。菫が前に話してくれた事言わないとわからないよなぁ」
和也は声のトーンを優しくした。
菫の話とはこうである。
彼女の父親東守は貿易商をしている。
銀座の小体なビルの社長だ。
母はそこで経理をして従業員はごく僅か、しかもアルバイト。
それで売り上げが悪いのかというと、大層な収入がある。
菫は疑問を持った。
そしてコッソリと父のパソコンを調べたのである。
驚くべき事が判明した。
養父は某国の産業スパイだったのである。
会社社長の仮面を被り、他国のブローカーと取引をしている。
菫が養女に貰われたのも、利発な彼女を立派なスパイに養成する為である。
その前に彼女を一流大学に入れ、そこからも最新情報を入手するつもりだったらしい。
「正義感の強い彼女は、その情報を警察に流そうとした。そこで両親に気付かれた。
その直前にこのメールを打った。
暗号にしときゃ誤魔化せるからね。
今彼女は危険な状態にあるかも知れない」
「嘘う! それって証拠あるの?」
ヨシミは遮った。
読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️
最新の画像もっと見る
最近の「創作」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事