読書の森

近江の海



「近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば
心もしのに 古思ほゆ」

万葉集にある柿本人麻呂の歌である。
この歌のリズム感のある響きが、学生時代からとても好きである。


近江は滋賀県である。
海とは琵琶湖、夕暮れになると湖畔に集う千鳥のがチイチイと鳴く。
湖の面は夕陽に映えて千鳥の声は無心に聞こえる。
その声を聞くと胸が切ない程に、昔の思い出が蘇る。

この解釈は私なりのものである。
ネットで検索すると、千鳥が物悲しく鳴き、心が沈み込む、萎びるといった解釈が普通されている。

ただ私にとって、群がる千鳥が仲間を求める声は、むしろ優しい響きに思える。
集まって、又散っていく人と人との関わりを連想する。

この歌は、当時柿本人麻呂が実際の情景を観て詠んだものだ。
昔の琵琶湖はさぞかし自然が豊かだっただろう。



実は2ヶ月位前の移転時から、私はこの「心もしのに」(心が切なく、昂じると萎えてしまいそう)という状態を毎朝味わう様になった。
それが今は終日味わっている。

この症状が母を喪った後の鬱状態と言えばそれまでだが、様々な要因がある様だ。
その一つにその間起こった天災がある。

我が身だけでなく、世の中全体が急に変化して生き辛くなったと思う。
ほんの数年前から観ても、普段凪いでいた海が常に荒れ狂っている様な世界になった気がしてならない。
一般人の心がこの影響を受けない訳はないだろう。

私が気が付くと昔に戻る道は塞がれている。

せめて、これから弱者がなおも弱者に陥る様な事態は避けてもらいたい。

今の自分を懸命に奮い立たせるのは無理がある。
しばらく、昔の長閑な情景を脳裏に再現する事で、潤いを持って暮らしたい。



秋も深まりました。
皆様が情趣ある景色をたっぷり楽しまれる事を祈ってます。
ただ、寒暖差の大きい気候、くれぐれもご自愛ください。

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