読書の森

100年前流された血

1914年6月、オーストリア・ハンガリー帝国の皇太子夫妻がセルビア人の若者に
よって暗殺された。
どこか暗い影の漂うサラエボの街をのどかに馬車で廻る最中に殺されたのである。

オーストリアはかってドイツをも支配した国、列強と呼ばれた国である。
波紋は世界に広がり、これが第一次世界大戦のきっかけとなった。
貧しいサラエボが富んで驕ったオーストリアの侵略を阻止すると目論んでの事だが、
実は皇太子夫人ゾフィーはチェコ人であり、夫妻はサラエボに深い親しみを持って
訪問したのである。

親族の死によって皇位継承権が回ってきたフランツ・フェルディナントは、心に秘めた人がいた。
伯爵夫人付けの女官、ゾフィーである。
これは一族の大反対に遭った。

しかし、二人は愛を貫いた。
当時、身分違いの結婚は貴賤結婚と言われた。
夫婦は差別され、妻は決して同列に並べなかった。

それ故にというべきか、二人は極めて自分達の家庭を大事にしていたし、国家主義的
なものを排していた。

暗殺される人物とは、多くの場合平和を愛し自由を叫ぶ人である。
浜口雄幸、板垣退助など分かりやすい例である。
何故、こんなバカな勘違いの為に、莫大な血を流さなければならないのだろう。

皇太子最後の言葉は
「ゾフィー、死んではいけない。子供たちの為に生きなくては」
だった。
妻の答えはない。
彼女は既に息をしていなかったのだから。

100年前、ささやかな平和を愛する家族を暴漢が殺害した事件が、国家間に理性の効かない戦乱を巻き起こし、世界中の数えきれない家庭の幸せを奪った。
忘れてはならない歴史である。

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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