常念岳(2,857m)・蝶ヶ岳(2,677m) ((3)のつづき)
「~ 常念の頂に佇んだときの自分は実にこう思ったのである、自然というものは、自分の感じた通りに現われもし、動くものであると、自然の自由とは、即ち自分の感じ得る自由である、我はこの山脈に分け入って、昨は月の清光を浴び、きょうは雲漫々たる無限を踏む、我といえる一個体、一霊魂、一可燃性の存在を許して我を通過して観ぜしむる宇宙は存外小さいものではあるまいか。 ~」
(『奥常念岳の絶巓に立つ記』(『山岳紀行文集 日本アルプス』より) 小島烏水著・近藤信行編(岩波文庫))
二日目の朝もよく晴れました。四阿山と根子岳の北側、志賀高原のあたりからゆるやかに朝陽がのぼってきました。
槍ヶ岳は、昨日の午後は逆光で雪だけが明るかったですが、朝になって順光になるとすべてが明るく変わりました。
手前の尾根には喜作新道が通っています。小林喜作によって、この尾根に登山道がひらかれたのは1920年のことでした。
喜作新道を歩けば、大天井岳から槍ヶ岳へは1日でたどり着けます。大天井だけからでもここ常念小屋からでも、直線で測れば槍ヶ岳までの距離は大差ありませんが、常念小屋からは槍ヶ岳が遠く感じられます。
尾根には常念山脈の影が真っすぐに映っています。その傾きは時間と共に変化し、10分前には暗かった残雪に陽が射していたりします。小学校の校庭に棒を立てて影の長さを調べたのを思い出します。
すぐそこに見えた常念岳の頂上は、思っていたよりは遠く、小屋から急な斜面を一時間半ほど登りました。
(登頂:2013年7月中旬) (つづく)