槍ヶ岳(3,180m) (つづき)
槍平小屋は標高1,990mにあり、今日の帰りのコースのほぼ中間にあたるところです。久しぶりに平地に出て開けた感覚になり、ほっとします。中日本航空と書かれた紅白の吹き流しが弱くたなびき、西穂高岳が見えています。テント場のテントは、上高地よりも地味な色のものが多い気がしました。小屋の昼食の営業は終わっており、大汗をかきながらインスタント麺を食べました。
大きな石のゴロゴロした南沢を渡ると右俣谷に沿った下りになります。槍沢コースのように水の流れのすぐそばを通るのではなく、沢を見下ろしながら歩くところが多かったです。そして、下りコースのはずなのに登り返しもけっこう多いです。
今日一番のハイライト、滝谷出合です。見上げた先の岩はジャンダルムでは?しかし、ドーム形の岩峰を見つけてジャンダルムだと思ったのはそうではなく、「滝谷ドーム」でした。日本アルプス屈指の岩場・滝谷。自分でこの岩場を遡ることは決してないでしょうが、目の当たりにして凄い風景だと思いました。自分たちが立っている場所は、もの凄い場所に違いありません。ピークの滝谷ドームから、太い流れの滝を経て今いる場所までを結んだ線がまっすぐではなかったことに迫力を感じ、一帯を支配する轟音が印象に残りました。
緑の濃い樹林帯を1時間と少し下ると殺風景な砂防ダムに出て、奥穂高岳へ向かう白出沢コースとの合流点から林道に出ました。
ここで登りの人と2人すれ違いました。夕方4時半になっているので聞いてみると、”松本からここまでの道路が渋滞して到着がとても遅くなってしまったが、今日のうちに槍平まで歩く”とのことでした。
穂高平小屋の横は牧場でした。牛が牧草を食んで、ゆっくりしていました。
今日は、飛騨乗越からの下りは炎天下、樹林帯に入っても暑さが大変でした。登りの人はみなさんもっと大変そうでした。登りの槍沢コースと比べると確かに短いのですが、それでも長かったです。普通の山なら1時間で済むところが2時間かかるという感じです。しかし、歩き始めの大きなカールの中の下り、槍平小屋付近の樹林帯、そして滝谷出合の眺望と、序盤・中盤・終盤でそれぞれ見どころが待っている素晴らしいコースでした。
開放感にあふれて個性的な槍沢コースに比べると、飛騨沢コースは北アルプスの他の登山コースに似ているところが多く、それもまた魅力であると思います。行き交う人は飛騨沢コースの方がずっと少なく、静かでした。
登山の充実感に浸りながら、平湯温泉の旅館で鉄分の多い湯につかり、おいしい夕食に舌鼓をうちました。
(登頂:2016年8月上旬)