南アルプス・仙丈ヶ岳(3,033m) (つづき)
仙丈ヶ岳は、小仙丈沢カール・藪沢カール・大仙丈沢カールの、3つのカールを擁しています。
そのうちの1つ、藪沢カールにつけられた登山道を下ります。道の両側はハイマツに覆われています。
カールは氷河が遺した地形のひとつです。北アルプスにもカールを擁する山々があります。黒部五郎岳や笠ヶ岳のカールはとても大きかったですが、そこだけが周りと別世界という、凝縮された雰囲気もありました。仙丈ヶ岳のカールは今思い出しても、北アルプスで見たカールとは比較にならないほど大きいです。一つの谷が山全体を丸のみしてしまいそうなくらいです。そして、道を下れば下るほど、大きかったカールがさらに大きくなっていく錯覚すらあったと思います。
「~いかに地形学に弱い人でも納得できるような典型的なカールである。頂上に立って、帰路は藪沢のカールへ下ろう。その底にあたる所に石室がある。そこまでおりて振返った時、なるほどこれが圏谷というものか、とふたたび分明に認識するであろう。~ 」(深田久弥『日本百名山』(新潮社版)
このあたりが「底にあたる所」だと思います。何回も振り返って眺めたカールも、もうすぐ見えなくなりそうです。ここから少し下ったところに馬の背ヒュッテが建っています。
(登頂:2011年9月中旬) (つづく)