平標山(1,983m)・仙ノ倉山(2,026m) (つづき)
谷川連峰の最高峰・仙ノ倉山頂は小さい台地状の場所で、三角点と大小一つずつの標識以外は何もありませんでした。平標山頂は賑わっていましたが、こちらまで足を伸ばす人は少ないようです。空は雲一つすらありません。谷川岳のみならず、そこから谷川連峰が馬蹄の形に伸びた先の朝日岳まで分かります。その奥には尾瀬の燧ヶ岳と至仏山、さらにうっすら奥白根山まで見えていました。素晴らしい眺望でした。
仙ノ倉から谷川連峰を眺めると、一つ一つは特徴があまりない山々と思いました。主峰・谷川岳ですら、ただの一ピークにすぎません。しかし、これだけの距離が続いていること自体に価値があると思います。そのうえ、稜線の曲がり具合も絶妙です。もっと高さがあって荒々しくても良さそうなものなのに謙虚です。どの山も笹に覆われて似たような姿、、例えばモーツァルトの音楽もそうです、どれも同じような音楽に聴こえます。それは同じ人が作曲したのだから当然だし、しかも作曲家の性格がそうさせるのか謙虚です。しかし、同じように聴こえるその音楽を一曲でも多く聴きたいのです。
平標山から眺める仙ノ倉山はすっきりした姿でした。反対側から今度は平標山を眺めると、さらにシンプルな姿でした。笹の斜面が風に押されて、波打っているようでした。
『関東百山』には、二つの山の間で起こった遭難事故のことが書かれています。
「~ この「山と渓谷」の記事によると、遭難の最大の原因は誤って立てられていた指導標にあると分析されている。仙ノ倉山の西の平標山との間の指導標が仙ノ倉山に向けて「仙の倉、平標山」と指していたのだが、本来、これは仙ノ倉山の東のエビス大黒との間に仙ノ倉山を指してたてられるべきものであった。
なにぶんにも指導標が間違っていたというのだから反響は大きかった。指導標さえ正しければ、たとえ悪天候であっても早いうちに平標小屋に逃げこめて遭難にまでは至らずにすんだであろうともいわれている。 ~」(浅野孝一・打田一・楠目高明・横山厚夫著『関東百山』実業之日本社)
そんなことが本当に起こってしまったのかと思います。しかし、視界が悪いと、ここでは手掛かりになるものが何もなくなってしまうでしょう。そんな時に、この場所でもし間違った標識を見てしまったらどうなるか自信がありません。
(登頂:2012年6月中旬・2014年10月中旬) (つづく)