巻機山(1,967m)・牛ヶ岳(1,962m)
「~ 巻機山は、機の神様である巻機さんを祀ってあると聞いたことがあるが、さだかでない。養蚕に関係があるのかもしれない。ともあれ『北越雪譜』にもその前峰の名が出ているくらいだから、昔から魚沼郡では知られていた山に違いない。巻機山というやさしい名前と共に、この隠れた美しい山を、私は上越国境中の一名山として挙げたい。 ~」(『日本百名山』深田久弥(新潮文庫))
(注)「前峰」→巻機山の前峰「割引岳」
冬晴れの日に上越線で越後湯沢から北へ向かうと、車窓の右手に4座の山が目をひきます。そのうち3座は越後駒ヶ岳・中ノ岳・八海山で、「越後三山」という名前で一括りになっています。越後三山には、電車が進むにつれて見える順番が変わってくる面白さがあります。一方、巻機山は真っ白になった麓の田圃と一体になり、大きな山なのに重さがなく、何という美しい山だろうと思わせます。ピークは槍ヶ岳ほど鋭くはありませんが、十分はっきりしていて、山ひだの1本1本は急流のように自然な線を描きます。「まきはたやま」という読みは、”鶴の恩返し”の機織りを思い起こさせ、控えめに聞こえます。山の姿と名前の響きが強く結びついた風景だと思います。新幹線ではなく在来線に乗らなければ、この風景を味わうことはできません。
(登頂:2016年5月下旬) (つづく)