皇海山(2,144m)
皇海山は、まず読み方の難しいのがユニークです。瑞牆山(みずがきやま)の「牆」のように、見たことのない漢字で読みも分からないというのとは違い、ありふれた漢字の組み合わせを「すかい」と読ませるところがユニークです。南アルプスの光岳(てかりだけ)も同じです。『日本百名山』では、皇海山の紹介が、
「皇海山という奇妙な読み方をする山を初めて知ったのは、まだ私の学生時代で、木暮理太郎さんの「東京から見える山」の写生からであった。それは赤城山と男体山との間に、錯綜した前山の奥に、牛の背のようなドッシリした山容を覗かせていた。 ~」(深田久弥『日本百名山』(新潮社))
という、実に素直な書き出しで始まります。
東京の街から皇海山を見たことはありません。こんなに遠くにある山が東京から見えるとは、考えたこともありませんでした。「赤城山と男体山との間」というヒントがあることだし、寒い日に東京スカイツリーに登った時に、試してみたいと思います。
次にユニークなのは、皇海山の標高(2,144m)です。
日本百名山を標高の低い順番に並べてみると、一番低いのは筑波山(877m)、一番高いのは富士山(3,776m)。皇海山は50番目に来ることが分かりました。51番目は苗場山で2,145m、偶然にも1m差でした。
百名山の標高の平均は2,276mで、50番目の皇海山より高いと出ました。富士山は言うまでもないですが、全部で13座の3,000m峰、それに続く2,900m台の山7座が、平均を押し上げています。
比較してみると、”日本二百名山”の平均は1,858mでした。百名山より400m以上低く、意外と差があると思いましたが、百名山と反対に標高の低い名山が二百名山には多く挙げられています。百名山の中で2番目に低い開聞岳(924m)と、3番目に低い伊吹山(1,377m)の間に、二百名山が17座もあります。ただし、二百名山で標高が1,000mを切る山は一つもありません。これまた意外です。
皇海山より1m高い苗場山 山頂に広がる湿原
ついでに考えたのは、日本百名山の中に高さが「素数」の山はいくつあるかでした。少し調べるだけで、「エラトステネスのふるい」という、素数を発見するためのアルゴリズムがあると分かりました。結果は15座で、高い順に
・木曽御嶽山 ・剱岳 ・笠ヶ岳 ・常念岳 ・光岳 ・トムラウシ ・平ヶ岳 ・幌尻岳 ・雲取山 ・越後駒ヶ岳 ・両神山 ・利尻山 ・荒島岳 ・雌阿寒岳 ・筑波山
となり、計算する前に予想していたより多かったですが、同じ2,141mにトムラウシと平ヶ岳が重なり、1,723mと1,721m(2つ違いの素数→”双子素数”)に両方あてはまる(両神山と利尻山)偶然もありました。
素数は、1とその数以外に約数のない自然数ですから、いわば「整数の源泉」のような数です。これらの山々が”素数の百名山”になったのも何かの必然に違いありません。北海道のトムラウシや幌尻岳、北アルプスの剱岳など、奥深く安易に人を寄せ付けない、百名山の源泉のような山々が浮き出てきました。富士山の標高は偶数なので素数ではありませんが、逆に一番高さの低い筑波山は出てきました。
皇海山がちょうど半分だと気付いたところから面白いです。高さ順の山のリストは何の作為もない偶然です。
登山口から歩き始めると、すぐ不動沢を徒渉し、その後もしばらく沢沿いに登っていきます。
原生林の混じる、整然としたカラマツ林が美しいです。
(登頂:2017年10月上旬) (つづく)