佐白山(205m)
「~ ここ佐白山は、「お城山」ともよばれ、市民に親しまれている。それは今から七百数十年の昔、鎌倉時代に笠間地方初代の領主笠間時朝によって、十六年の歳月を費やして築かれた山城があり、明治の始めまで約六百年間、地方政治の中心地であったからでもある。 ~」(笠間市観光協会の案内より)
JR水戸線の笠間駅から、まず笠間稲荷神社へ向かいます。
「東芝ストアー」の看板の出ている建物が、さほど離れていない距離に2軒あります。色は褪せていましたが、「こんにちは東芝です」と書いてあるのが、呼びかけられているようで懐かしい感じがします。
駅から神社へはその昔、笠間人車軌道が通っていました。人車軌道とはその名の通り、人力で車両を動かす鉄道です。約1.4kmの区間を、大正4年から大正14年までの間、最盛期には年間15万人を運んでいた記録があるといいます。線路の幅は、有名な黒部峡谷鉄道の762㎜よりさらに狭い、610㎜でした。
復元された木製の客車が、ガラス越しに展示されていました。ほぼ正方形の窓が3つ並んでいます。現代の鉄道よりはずっと小さいですが、人力で動かすには大きそうに見えました。
笠間稲荷神社では、花は咲き終わっていましたが、樹齢約400年という大きな「八重の藤」を見ました。重要文化財の、本殿の彫刻も立派でした。
佐白山へは新緑の濃い道が緩やかに続き、途中でトンネルをくぐります。電気は点いていませんが、短いので懐中電灯の必要はありませんでした。
トンネルの上部にも道があります。小さな山の歩道に、立体交差があるのがユニークです。思い出したのは鈴鹿サーキットでした。スケールは全然違いますが、鈴鹿サーキットも世界的に数少ない、立体交差のあるレーシングコースだからです。
広場のような場所に、城跡らしく「城山」という名前の三等三角点があります。高さは182.1mです。佐白山の頂上は三角点より高く、200mを超えています。
最後に大きな石段を登ります。毎日ここを歩くのなら、お城への通勤も大変です。立派な石垣もありますが、ところどころ崩れています。シートがかけられたところもあります。東日本大震災で崩れてしまったといいます。復旧のための機械を運び入れるのも難しそうでした。
頂上の佐志能神社では、低山ながら樹々の間からすばらしい眺望がありました。如何にも古城らしい雰囲気でした。
「~ 古くは、白雉2年創建と伝えられる佐白山正福寺もあった。中世笠間北部の八瓶山麓に300人以上の僧侶を擁した布引山徳蔵寺があり、両寺の間に勢力争いが起き槍・刀をもって戦っている。 ~」(『角川日本地名大辞典8 茨城県 総説・地名編』 角川日本地名大辞典編纂委員会(角川学芸出版))
小さな山ですが、どの方角に向かって歩いているのか分からなくなるような面白さがありました。城を築くのに、とてもふさわしい複雑な山だったことが分かりました。
帰りに麓の笠間日動美術館に立ち寄りました。登山の後に名画鑑賞が出来るのも、城址の登山ならではだと思いました。
(登頂:2020年5月下旬)