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千枚岳(2,880m)・悪沢岳(3,141m)・赤石岳(3,121m)・聖岳(3,013m)
(つづき)
千枚岳から2時間ほどかけて、悪沢岳へ着きました。地図に書かれているよりたくさん時間がかかりました。もともと歩くのは速くありませんが、意識してゆっくり歩いたのもあると思います。
途中、丸山(3,032m)という小ピークも通過したものの、ここまで来て初めて、三千メートル峰へ登ったことの感動を覚えました。
昨年6月の立山に次いで、7座目の三千メートル峰登頂です。立山ももちろん素晴らしいですが、このすがすがしい気持ちはその時をさらに上回ります。晴れ渡った青空に、南アルプスの山々、雲海の向こうの富士山。ここ悪沢岳は、あの槍ヶ岳に次いで、日本で6番目に高い山なのです。
「この山は国土地理院の地図には東岳となっているので、その称呼が普及しつつあるようだが、私たち古い登山者にとっては、どうあっても悪沢岳であらねばならぬ。悪沢という名はそれほど深く私たちの頭に刻みつけられている。」(深田久弥『日本百名山』(新潮社版))
「古い登山者」のみならず、僕のような新しい登山者にとっても同じ気持ちがします。「悪」の一文字が出てくることそれだけで、この山は興味を惹き続ける存在でした。
標高(3,141m)は、円周率だと思うとすぐ覚えられます。
まだ訪れたことはありませんが、鹿児島県・トカラ列島の「悪石島」に惹かれるのと同じです。
『日本山名事典』(三省堂)を見ると、「悪」の字が使われている山はほかにもいくつかありました。「悪四郎山」や「悪婆山」など、字のイメージとは真逆に、愛嬌のある悪ガキや婆さんが山に住み着いているように聞こえます。
「荒川東岳」と書かれている標識のあるこの場所こそ、本当は悪沢岳の山頂です。
塩見岳の奥に仙丈ヶ岳が見えるのが嬉しいです。岩峰の甲斐駒ヶ岳は、頂上が真っ白でした。個性的な山々の共演です。
(登頂:2016年9月上旬) (つづく)