鹿島槍ヶ岳(2,889m)
北アルプスで初めて登った山が鹿島槍ヶ岳です。美しい双耳峰の写真を見てとても気に入りました。
名前もいいし、ルート(柏原新道)に危ない箇所はなさそうでした。
登山中ずっと天気は悪く、ほとんどの時間レインウェアを着ていました。柏原新道を歩く途中学校登山の一行とすれ違いました。最初挨拶だけだったのが、どういうわけか子供たちと次から次へハイタッチを交わすことになりました。100回以上も手をたたいて痛くなってきましたが、元気づけにとても効果がありました。いいことが起こりそうな予感でしたが、残念ながら天気は悪くなる一方で、最後は土砂降りの中冷池山荘へ駈け込んで一日が終わりました。
次の日も雨の中の出発でした。このまま山を見ずに頂上へたどり着いてしまうかと思った瞬間、南北二つの頂上とそれを結ぶ美しい吊尾根が目の前に飛び込んできました。こんな凛とした品のある山は今までに見たことがありませんでした。西側には、雲が邪魔をしているものの剱岳と立山が並んで姿を現しました。次に、しばらくして後ろを振り返ると爺ヶ岳、遠くに蓮華岳と針ノ木岳、そして薄く虹がかかっていました。南峰の頂上へ着いた時には再び濃い霧の中に逆戻りで、吊尾根を往復する間にほんの少し青空が見えました。
これらのわずかな眺望が、1泊2日の登山中に稜線からのぞむことのできた景色のすべてで、時間にして全部で三十分もありませんでしたが、それだけで心から満足しました。鹿島槍は生まれて初めて登った北アルプスの山、これから何十年と登山を続けても、いつまでもこの日の記憶は残り続けます。北アルプスデビューの山に鹿島槍を選んで本当に良かったし、あのたった少し霧のとれた時間だけで、この先北アルプスの山を終生歩き続けたいと思うのには十分でした。柏原新道でハイタッチを交わし自分のことを勇気づけてくれたあの生徒たちも、一人でも多く登山を趣味にしてほしいと思います。
剱岳と立山連峰
北峰の頂上に立つとほんの少しの時間青空が見えました。
雲の向こうには五竜岳が聳えているはずです。
吊尾根をたどって南峰へ戻る途中にも、1回だけ雲が取れる瞬間がありました。
ハクサンイチゲの花
(登頂:2012年7月下旬)