奥穂高岳(3,190m)・涸沢岳(3,110m) (つづき)
ザイテングラートとはドイツ語で「seitengrat」、”支稜”という意味です。ここは「支稜」であり、主稜ではありませんが、重要な存在であることは確かです。ザイテングラートがなければ、奥穂高岳への登山はもっと難しいものになっていたことでしょう。
正面の鋭鋒は涸沢槍です。槍ヶ岳と同じくらいの立派な鋭鋒です。もし山を知らない人に、これが槍ヶ岳ですよと写真を見せたら、みんなそうだと思うでしょう。
ライチョウの鳴き声が聞こえるものの、姿は見えません。
南側には、前穂高岳へ前穂北尾根が連なっています。槍ヶ岳からも北尾根を見たことがありますが、間近で見ると迫力が全然違います。
北側には、北穂高岳から涸沢岳へ穂高の主稜線が連なります。この稜線には登山道が付けられているものの、北アルプスでも屈指の難易度だといいます。下から見上げると、そこまで険しい道には見えません。距離も短そうです。しかし、今日ここを歩いた人の話では、岩が脆くて「つかんでもボロボロ崩れる」、「クサリはあっても長さが足りない」、「結局しがみつくしかない」コースなのだそうです。
振り返ると常念岳が美しいピラミッドです。槍から眺めると均等な三角形ですが、ここからの常念岳は山ひだの一つ一つがくっきりして、彫りが深いと思いました。
今日はこのザイテングラートを登り切れるか不安でしたが、歩いてみれば大丈夫でした。岩はグリップが効いて、滑りやすいところはなかったです。鎖のかかっている場所もありますが、使う必要はありませんでした。槍ヶ岳の山頂へ登るよりはやさしいと思いました。ただし距離はずっと長いです。登り切るまでに1時間40分かかり、槍ヶ岳の岩場の3倍はかかりました。緊張を持続させる必要があると思いました。
しかも、ザイテングラートを登って終わりではなく、ここからさらに奥穂高岳の頂上への岩場が待っています。ずっと前から、一度は立って見たかった頂上がすぐそこまで来ています。振り返ると、涸沢ヒュッテのキャンプ場のテントが、米粒のような小ささです。
(登頂:2017年9月初旬) (つづく)