薬師岳(2,926m)・北ノ俣岳(2,662m)・黒部五郎岳(2,840m)・三俣蓮華岳(2,841m)・鷲羽岳(2,924m)・双六岳(2,860m) (つづき)
薬師岳での御来光を満喫し、太陽が昇った後もその場に30分はいました。
生まれて初めて見た黒部五郎岳は、ひさしのとても長い麦わら帽子のような形をしていました。今日はこれからあの山まで歩くと思っても、実感がありませんでした。
どうしても黒部五郎岳に登りたいと思ってここまでやってきましたが、山容は写真でしか知ったことがなく、写真はすべて黒部五郎岳の大きなカールをうつしたもので、薬師岳から見た姿はそれらとはまったく違うように見えたからです。
朝食の後、7時前に小屋を出ました。昨日と同じ道を太郎平まで戻っていきますが、天気が素晴らしいので昨日とは気分が違います。どれもこれも初めて見る眺望です。
黒部五郎岳の右に見える、黒部五郎岳よりもさらになだらかな山が北ノ俣岳です。小さな太郎平小屋から北ノ俣岳に向かって、稜線が途切れずに続いています。標高は薬師岳より低く、薬師岳の山頂から見下ろした北ノ俣岳はまるで丘のようでしたが、だんだん山らしい姿へと変わっていきました。山頂の残雪も目を惹きました。
前夜を太郎平小屋で過ごし、これから薬師岳へ登ろうとする人たちとたくさんすれ違いました。
小屋の前のベンチで、1時間も気持ちよく居眠りをしてしまい、北ノ俣岳へ向かって出発しました。歩きやすい道ですが、すれ違う人はほとんどいなくなりました。
次第に雲が多くなってきましたが、山頂に着く前に、少しだけ青空が出てくれました。稜線をなぞるように雪が残り、その下にはハクサンイチゲの大群落がありました。雪がなくなったところから順番に、どんどん花開いていく様子が伝わってきました。北ノ俣岳は、ただの穏やかな山ではなく、高山植物の息吹がひしひしと伝わってくる山でした。
頂上に着くと、周りは再び霧に覆われてしまいました。頂上には、手書き文字の標識と小さなケルンがありました。名山の多い北アルプスでは目立たない山かもしれませんが、もしこの山が他の場所にそびえていたなら、もっと注目されているに違いありません。
(登頂:2012年7月下旬) (つづく)