水晶岳(2,986m)
「~ 山は有り難いものだと思う。山は眺めて有り難く登って有り難く、想っても有り難い。有り難いというので足りなければ、西上人の詠った「かたじけなさ」か。偉大、神秘、至上なるものの前に頭を垂れる時の、厳粛敬虔の念、畏るべくして親しむべく、愛すべくして馴るべからざる感、身も心も慄えるような崇高な一種の歓喜・・これらは真の登山者の経験するところの心境であると思う。 ~」(中村清太郎『山岳礼拝』(近藤信行編『山の旅 大正・昭和篇』(岩波文庫))
2012年の夏、薬師・黒部五郎・鷲羽などの山々へ登った時は、晴天に恵まれ感動のし通しでした。
薬師岳山荘に泊まった時、食事中に話した人のほとんどは、明日雲ノ平へ行くとのことでした。その2日後に、三俣蓮華岳への登りの途中、文字通り真っ平らな雲ノ平を見ました。これは一度行ってみたいと思いました。
それから2年経ち、雲ノ平と未登の水晶岳を組み合わせた3泊4日の山行に出かけましたが、2日目からはこんなに天気予報が外れるのかと思うくらいの天気が続きました。
それでも、水晶岳の頂上には立てました。「水晶岳 二九八六M」の標識を見つけた時の嬉しい気持ちは、景色は何も見えなかったのに、今でもすぐ思い出すことができます。
◆(1日目) 折立バス停8:42→太郎平小屋12:36~13:45→薬師沢小屋15:51
富山駅から折立までバスに乗り、そこから太郎平小屋までは2年前と同じ道を登りました。小屋では行者ニンニクの入った「太郎ラーメン」を食べ、同じように気持ちよく昼寝もしました。目指す水晶岳が大きいです。
ここは、折立から来た道を含めると登山道が4方向に伸びています。唯一歩いたことのない、薬師沢への道に入りました。
ハクサンイチゲのお花畑を抜け、思っていた以上にどんどん標高を下げていきます。
何回か薬師沢を木道で渡渉します。3回目の渡渉地点が「左俣出合」で、水面から木道まで高さがあります。橋脚はしっかりしていますが、欄干はありません。「沈下橋」のようだと思いました。
標高およそ2,000mの場所まで来ましたが、さらに下ります。笹原と針葉樹の森が交互に現れます。笹原には木道が敷かれ、ニッコウキスゲの花は、最盛期を過ぎているものの、何とか咲き残っていました。
水が透き通って底がすべて見える沢を見下ろした後、薬師沢小屋の赤い屋根が見えてきました。
(登頂:2014年8月上旬) (つづく)