北アルプス 槍ヶ岳(3,180m)・笠ヶ岳(2,898m) ((1)のつづき)
5時15分に宿を出ました。とても寒い朝です。
上高地から槍ヶ岳山荘までおよそ18kmもある登山道のうち、半分を上高地の平地歩きが占めています。途中の横尾山荘までは、水平距離で約10kmあっても、標高差は120mほどしかありません。
森の中はまだ暗いのに、対岸の明神岳と前穂高岳の頂上が真っ赤に染まっています。赤色を明るくすると、あんなに眩しく見えるのかと思います。
しばらく歩くと新村橋の袂に出ます。素朴な吊り橋ですが、橋を渡った先は別世界という感じがします。
橋から川を眺めると、大きな石が無数にゴロゴロしています。河原が森になっている場所もあります。流れの真ん中で、岩のように盛り上がっている樹の集まりもあります。地形はほとんど平坦でも、水音と吊り橋の揺れから激しさが伝わってくるようでした。
「~ これほどの高地にこれほど広い氾濫原を持つ河川は、日本では上高地だけだ。自然条件も飛び抜けて厳しい。 ~」
「~ 氾濫原と呼ばれる河原は極めて不安定だ。いつも水によるかく乱の危険をはらんだ場所だ。だが、そんな厳しい環境にも、試練を乗り越えて樹木は育つ。洪水や大水のたびに、河畔林はあちこちで破壊されても、再生を繰り返している。上高地では、50年で約50%の河畔林が破壊されているとする研究もある。 ~」(『日本の森列伝』米倉久邦(山と渓谷社))
(登頂:2013年9月上旬) (つづく)