槍ヶ岳(3,180m) (つづき)
夜が明けて、素晴らしい天気になりました。大天井岳の南から、柔らかに太陽が昇ってきました。久しぶりにクリアなご来光を眺めることができました。北鎌尾根を従えて、朝陽を浴びた槍ヶ岳の姿がまた凄いです。ここからでなければ見ることの出来ない景色です。泊まりをここヒュッテ大槍にしてよかったと思いました。
まず、槍ヶ岳山荘まで東鎌尾根を約1時間の登りとなります。時々小さな岩場や梯子が出てくる道のりでした。近づくにつれ、槍の穂先がどんどん大きくなっていく過程が見ものでした。
槍ヶ岳山荘に着くと、ぐっと人が多くなりました。こちらの小屋では、朝から焼きたてパンの販売があると聞いて楽しみにしていましたが、まだ朝7時前なのに、残念ながら売り切れてしまっていました。
緊張感を楽しみながら、穂先を登ります。しっかりした足場を見つけながら歩けば、決して困難なルートではないと思います。ピークへ辿り着くための答えは必ず存在します。登る人は少なく、山頂でゆっくりできそうでした。”小槍”も見えました。3年前に登った時と違って、びっくりしたのは、そこに人がいたことです!
「槍ヶ岳は通算四回ほど登ったと思っているが、単独行以外の場合はその都度小槍にも登った。いつもついでに登ったという感じだが、少なくとも三〇メートルのザイル(麻)は携行していた訳だから、ついでになどと言うと小槍に申し訳のないことだ。ホールドもスタンスもしっかりとしているし、下降はもちろんアップザイレンだから、小さな岩塔ながら、登ったという満足感のもてる登攀だった。ブッシュもなければ浮き石も落石もない、小槍はすっきりとした快感をもたらせてくれたという点では好きな岩場になっている。」
(手塚宗求『諸国名峰恋慕 三十九座の愛しき山々』(山と渓谷社))
もし「ホールドもスタンスもしっかりとしている」のだとしても、小槍に登るのは槍ヶ岳に登るよりもずっと難しいことは、言うまでもないでしょう。
(登頂:2016年8月上旬) (つづく)