心が満ちる山歩き

美しい自然と、山に登れる健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山・街歩き・温泉・クラシック音楽‥‥

2016年夏休み・槍ヶ岳登頂(5)

2016年08月17日 | 北アルプス


槍ヶ岳(3,180m) (つづき)

 午後3時を回ろうとする頃、ようやく槍の穂先が現れました。分かっていてもこの景色を見るのは嬉しいものです。
 時間的に今日の登頂は無理そうです。宿泊するヒュッテ大槍へと向かい、頂上からの景色は明日朝の楽しみに取っておくことにしました。殺生ヒュッテの横から、斜面をトラバースする道を歩いてヒュッテ大槍に着きました。



 前回1人で登った時は山頂直下の槍ヶ岳山荘に泊まりましたが、今回はここが一夜の宿です。夕食は洋風とのことで、お茶碗に装ったご飯とは別にペペロンチーノのスパゲティーが出たのが意外でした。「お好み焼きとご飯」に似た組み合わせですが、一日中歩いた身体には有難く、二つでちょうどよいくらいです。そしてとても美味しく、山の上でこんな絶妙な歯ごたえのスパゲティーが食べられるとは思ってもみませんでした。
 ヒュッテ大槍は槍ヶ岳山荘よりずっと小さいせいか、アットホームな雰囲気がいいと思いました。
 僕たち夫婦は明日飛騨沢を下るのですが、同じコースの人は1人もいませんでした。意外だったのは、この日の朝上高地を出てここまで上ってきた人が多かったことでした。寝ないで沢渡の駐車場まで車を運転してきた人、夜行バスで早朝に上高地へ入ってきた人‥‥自分たちには徳沢からが精一杯、一日で上高地から歩くのは無理だと思いました。


 空が暗くなり、雲が薄明に照らされて薄い赤色になっていました。雲の向こうには月明りも見えます。
 ”今日、友人が北穂高小屋に泊まっている”という人がいました。手を振っても見えそうにありません。しかし、北穂高岳の山頂直下は鋭く光り、そこに小屋があるとはっきりと分かります。ここから北穂高岳までは直線距離で約4km、大きな双眼鏡があればわかるかもしれません。北穂高岳以外にも常念小屋、ヒュッテ西岳‥‥小屋の明かりを探すのも面白いと思いました。
 日が完全に暮れると、真下は少しずつ雲海になっていきました。
 とても興味深い景色でした。寒いのも忘れて二人でじっと眺めていました。

 「私は山小屋とは、海でいえば灯台のようなものでなくてはならないと思っている。つまり小屋番は灯台守りである。何日間も、十数日もの間、誰も登ってこない山小屋で、夜はランプの灯をともし、囲炉裏やストーブで火を焚いて一見無為に思える暮らしであっても、実は決して意味のないものではない。
 (手塚宗求『諸国名峰恋慕 三十九座の愛しき山々』(山と渓谷社))


 奥に連なる前穂高岳の北尾根が美しいです。


 表銀座縦走路に槍の影が映っていました。偉大な山は、影になってもなお偉大なようです。
 ピラミッドピークの常念岳もなかなかの姿でした。



 (登頂:2016年8月上旬) (つづく)



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