20世紀の前半、一部のエリート大学はユダヤ人の入学者数に上限を設けていた。放っておけば、優秀なユダヤ人がキャンパスにあふれてしまうからだ。例えばハーバード大学は、ユダヤ人学生が増えすぎてボストンの保守派の不興を買うことを恐れた。ユダヤ人が他の候補者に比べて優れているとしても関係はなかった。とにかくこれ以上増やしたくなかったのだ。
今、当時のユダヤ人に取って代わったのが、アジア系の学生だ。最近のウォール・ストリート・ジャーナルの記事「ハーバードの中国人排除法」の取材源である中国系移民の実業家、ユコン・ジャオによると、ハーバードなどの一流大学は、アジア人学生には他の人種より厳しい合格基準を設けているという。ジャオたちは、それが違法だとしてハーバードを訴えた。
64年の公民権法によれば、連邦政府の資金を得ている大学は、人種に関わらずすべての学生を公平に扱わなければならないと定めている。
だがアジア系アメリカ人が合格するには、SAT(大学進学適性試験)で白人より140ポイント、ヒスパニックより450ポイント、アフリカ系アメリカ人より450ポイント、高いスコアを取らなければならない。こんな基準は、到底公民権法にかなっているようには見えない。
彼らは「増えすぎるから」という理由だけで入学を拒否されている
だが、ハーバードは多額の訴訟費用にも耐えられるし、役所や法曹界も古い理想に染まっている。大学は、学生の「多様性」を実現するため、合格審査にあたって「全人的な(=主観的な)」基準で選抜することを許されるべきだ、という考えた。
大学が学生に占める人種的マイノリティーの比率を意図的に引き上げ始めたのは70年代のこと。「人種的多様性」を確保することでマイノリティーにチャンスを与え、より刺激的な学習環境も確保できるという考え方だ。結果として、多数派の白人は締め出された。
人種による差別の結果は簡単だ。大学は最も優秀な学生の一部を締め出し、その代わりにそれほど優秀でない学生を入学させる。大学のレベルは下がる。
今締め出されているのは、中国系、日系、韓国系、インド系の学生たちだ。彼らは、ハーバードのようなトップクラスの大学から入学を拒否されている。「増えすぎるから」という理由だけで。もし入学を認められていれば、学問的に貢献するだけでなく、大学にもさらなる名声すらもたらすはずだが。
成績で合否を決めているカルテックではアジア系が40%超に
模範的なエリート校もある。カリフォルニア工科大学(カルテック)のアジア系の比率は、93年の26%から今日の42.5%に増加している。入学審査において人種や民族の「多様性」という詭弁を使わず、学問的に優秀かどうかだけを基準としているからだ。
ハーバードに対して立ち上がったアジア系に、アジア系以外の人種も加わるべきだ。これは、優秀な人材に最高の学習環境を確保するための戦いなのだから。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150615-00151126-newsweek-int