MRI
脳神経外科の診療に今やなくてはならない医療機器であるCTとMRI、どう違うかご存じでしょうか。よく「MRIの方が新しく、CTよりも優れている」ということを患者さんから耳にします。この考えは正しくありません。今回はCTとMRIの違いについての話をします。
まず、CT。X線という放射線の一種を使用して脳の中の状況を把握する医療機器です。東日本大震災での原発事故以来、皆さんの放射能被曝(ひばく)に対する意識が高まっていますが、現在医療現場においても、病気の診断、治療を行っていく上で放射線はなくてはならないものとなっています。
CTもそのひとつですが、CT撮影で被曝する量は、体の健康に影響が出る被曝量よりはるかに少なく、心配はいりません。検査時間も数分で終わり、一般的には脳の全体的な評価を素早く見るには有益な検査です。
また、出血病変の検出や骨の情報などはMRIよりもむしろ優れており、脳出血を疑われる患者さんや、頭部打撲による頭蓋骨骨折などの外傷を調べるためにはCTが優先されます。
脳の血管が詰まる脳梗塞では、CTで脳に変化が出てくるまで6時間程度かかります(MRIでは発症後まもなく検出できます)が、われわれが、詰まった血管を緊急に再開通させた方がよいかの判断は、CTでの変化の有無を1番重要視しています。
次にMRI。これは放射線でなく磁力を使用して脳の中の情報を得る検査です。いろいろな条件を変えることにより、脳内のさまざまな情報が得られます。
脳腫瘍の場合、この腫瘍が柔らかいものか硬いものかなど、その性状までも把握できます。また脳血管の動脈硬化の程度や、脳神経と脳血管の位置関係の把握にも有用です。脳梗塞かどうかの診断もMRIを撮影することでいち早く可能となります。
ただし、撮影時間が30分程度必要でCTに比べて長く、安静を保てない人には不向きです。また先述したように磁力で撮影するので、体の中に金属が入っていると撮影ができなかったり、できたとしても画像がゆがみを生じて正しい診断ができなくなったりします。
以上、簡単に説明しましたように、決してMRIの方が優れているわけではなく、それぞれ一長一短があり、われわれは、患者さんの訴えをより正確に描き出した画像を得られる方を選んでいます。