驚きと感動で胸がいっぱいになった日から四ヶ月、風がさわやかに頬をなでる
五月の一日、夢は四小に会いに行くことにしました。戸久野市唯一の駅、
戸久野駅で電車を降りた夢は、その駅前のあまりの変わりように、思わず驚きの
声をあげてしまいました。当時唯一あった改札口は、今では『北口』という三つある
改札口のうちの一つとなって、他の二つの改札口(西口・東口)よりさびしい
にぎわいでした。四小へは戸久野団地行きのバスに乗って行きます。夢は、
『東口』から出ている団地行きのバスに乗りこみました。バスに乗ってからずっと、
夢の胸はどきどきしていました。
『四小さん、今どんなだろう。昔と変わっちゃったかな。会っても、もうお話できない
だろうな。』
ずっと、こんなことを考えていたのです。やがて、バスは走り出しました。バスの
窓から見える風景には、もう昔の面影は見あたりませんでした。夢は、車窓の
景色を眺めながら、三十一年という歳月の長さを思っていました。(夢が戸久野を
離れたのは十八歳の時。)団地まで十分の道を、バスは軽快に走って行きます。
やがて、団地にはいる坂が見えてきました。夢が子どもの頃、その坂は結構急で、
坂の両脇は土むき出しの崖でした。(今は傾斜も緩く、両脇もコンクリートですが。)
その坂を上りながら、夢は、
『そういえばあの頃、土むき出しの崖から、草木の根っこが結構見えていたな。』
と、当時のことを思い出していました。坂を上りきった所が団地の入口、
『団地入口』です。夢は、次の停留所の『団地西友前』でバスを降りました。