風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)四小編 其の弐

2010-04-05 23:44:03 | 大人の童話

驚きと感動で胸がいっぱいになった日から四ヶ月、風がさわやかに頬をなでる

五月の一日、夢は四小に会いに行くことにしました。戸久野市唯一の駅、

戸久野駅で電車を降りた夢は、その駅前のあまりの変わりように、思わず驚きの

声をあげてしまいました。当時唯一あった改札口は、今では『北口』という三つある

改札口のうちの一つとなって、他の二つの改札口(西口・東口)よりさびしい

にぎわいでした。四小へは戸久野団地行きのバスに乗って行きます。夢は、

『東口』から出ている団地行きのバスに乗りこみました。バスに乗ってからずっと、

夢の胸はどきどきしていました。

『四小さん、今どんなだろう。昔と変わっちゃったかな。会っても、もうお話できない

だろうな。』

ずっと、こんなことを考えていたのです。やがて、バスは走り出しました。バスの

窓から見える風景には、もう昔の面影は見あたりませんでした。夢は、車窓の

景色を眺めながら、三十一年という歳月の長さを思っていました。(夢が戸久野を

離れたのは十八歳の時。)団地まで十分の道を、バスは軽快に走って行きます。

やがて、団地にはいる坂が見えてきました。夢が子どもの頃、その坂は結構急で、

坂の両脇は土むき出しの崖でした。(今は傾斜も緩く、両脇もコンクリートですが。)

その坂を上りながら、夢は、

『そういえばあの頃、土むき出しの崖から、草木の根っこが結構見えていたな。』

と、当時のことを思い出していました。坂を上りきった所が団地の入口、

『団地入口』です。夢は、次の停留所の『団地西友前』でバスを降りました。