風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)六小編 其の拾四

2010-04-24 15:09:03 | 大人の童話

やがて、学校に着きました。六小は開校して41年たち、そうとう貫禄がついて

いました。夢は、その貫禄のすごさに、年月の長さを感じていました。自分の

中では、ついこの間、卒業したように感じるのに、実際の年月はなんと長くたって

いるのでしょう。周りの地域だけでなく、六小自身も変わった所が幾つかありました。

まず、夢が大好きだった時計台です。時計盤がなくなり、そこにかわりに校章を

描いた旗がかけてありました。校舎の色も塗り替えたのか、開校時の

ベージュ色から白色になっています。が、一番大きく変わっていた所は

なんといっても、あの、校舎と校庭の坂になっている境です。夢のいた頃、坂の

境には植木が植わっているだけでしたが、今は、そこにフェンスが張られて

いました。おそらく、あぶないということで張られたのでしょう。夢の頃から、境の

坂をすべりおりて遊んでいた子がいましたから。さらに、メインは体育館と

増築校舎です。夢は、当時、小山のあった場所に建つ体育館を見て、『ああ、今の

子はめぐまれているな。わたしも体育館でいろいろやってみたかったな。』と、

ちょっぴりジェラシーを感じていました。そうそう、あの日、「立派ぁー。」と眼を

みはったあの大きな校門、これだけは少し小さくなっていて、正直、夢はちょっと

がっかりしてしまいました。と、こんなふうに夢が思いをめぐらしていると、突然

大きな光で周囲が包まれ、

「キャー、夢ちゃん、夢ちゃん、夢ちゃん!」

と、あの騒々しい声が聞こえてきました。

「あー、まただ。やっぱり昔のまんまだなぁ、六小さんは。」

夢は、六小があいかわらずなのを知ってうれしくなるのでした。


風の向こうに(第三部)六小編 其の拾参

2010-04-24 12:16:56 | 大人の童話

平成十八年秋に、創立四十周年を記念して、六小に校歴資料室ができました。

翌十九年秋、夢は「資料室を見せてほしい。」と学校に電話しました。学校は心よく

承諾してくれ、卒業して三十六年ぶりに、夢は六小に会いに行くことになったのです。

六小へ行くには駅から歩いて行くか、四小へ行く時と同じ「戸久野団地」行きの

バスに乗り、「団地西友前」で降りて歩いて行きます。夢の子ども時代には、団地へ

行く途中のバス停「神山」で降りて歩いて行きました。今は、団地に行く途中の

バス路線が変わったので、バス停「神山」はありません。夢は、 

『六小さん、どうしているだろう。急に行ったら、びっくりするだろうな。会ったら、

昔みたいにキャーキャー言って喜んでくれるかな。あれ?でも、わたし、はたして

六小さんとまだお話できるんだろうか。』

などと思いながら、五年間通った懐かしい道を歩いていました。道の周りの様子は、

夢が子どもの頃とはだいぶ違っていました。周りにはほとんど家が建ち、遠くの方に

ちらほらと見えていた林はその影もなく、畑は、ほんのもうしわけのように少ししか

残っていませんでした。当時、団地と畑の境目からよく見えていた六小、同じ

場所から今はもう、学校を望むことはできません。六小の周りの変わりようを

目の当たりにして、夢はただただ驚いていました。