「何しに来たの?今頃。会いに来てねって言ったでしょ。夢ちゃんも、会いに
来るって言ってたのに。今頃になって、やっと会いに来るなんて。36年もたってから
来るなんて。今まで何やってたのよ。」
六小は、夢が急に来て驚いたのとうれしいのとで、頭が混乱していました。本当は
すごくうれしいのに、夢に向かって半分怒ったような顔になっています。それだけ、
夢が会いに来てくれるのを、首をながくして待っていたのです。夢は微笑みながら
六小に優しく言いました。
「待たせてごめんね。」
「も・う、夢ちゃんのバカ!いつまで待たせんのよ。わたし、ずっと・・・ずっと・・・
待ってたんだから、も・・・う。・・・・ウッ・・・・ウッ。」
いつのまにか、六小は泣き声になっています。夢が、クスッと笑って言いました。
「フフッ・・・六小さんたら、あの時から泣き虫だね。」
「だって・・・・だって・・・・いいじゃないの。ウワ~~ン・・・・・」
と、突然六小が言いました。
「夢ちゃん、にらめっこしよう。夢ちゃんが勝ったら、わたしに会いに来るのが
こんなに遅くなったこと、許してあげる。」
「え、また。」
「うん。」
六小は、にっと笑いました。夢は思い出していました。卒業まであと二ヶ月という
あの日、六小に「卒業文集に四小さんのことを書いていい?」と聞いた時、
「にらめっこで、夢ちゃんが勝ったら許してあげる。」と言われたことを。夢は
答えました。
「よし、いいよ。負けないから、っていうか、負けてもいいけど。」
「何よ、それ。」
「ウフフフ・・・・・アハハハ・・・・・」
二人は、いっしょになって笑いだしてしまいました。
「あ~あ、にらめっこする前に笑っちゃったね。」
六小が笑いながら言います。
「うん、そうね。」
夢が返します。
「まっ、いいか。」
「うん、まっ、いいんじゃない。」
「何、それ。」
「ウフフフ、アハハハ・・・・・」
二人は、またいっしょに笑っていました。