その後も夢は、一・二度四小に会いに行きました。が、四小を呼び出すことは
ありませんでした。ただ遠くから、その姿を眺めていたのです。四小は静かでした。
夢は、そっとその場を離れようとしました。すると遠くから、ほとんど聞こえない
くらいの、小さな声が何やら聞こえてきます。耳を澄ましてよく聞いてみると、それは
四小の声でした。夢は一所懸命、四小が何を言おうとしているのかわかろうと
しました。四小は、消え入りそうな声でこう言っていました。
「夢・・・ちゃん、待って。帰ら・・・ないで。話し・・たい・・ことが・・あるの。」
声とともに弱弱しい光が放たれ、四小が必死なことが夢にはわかりました。
「四小さん!いいよ、わかったから、帰らないから。何?わたしに話したいことって。
ゆっくり話していいよ。言って!」
夢は、歩きだそうとしていた足を止めて四小に話しかけます。四小はそれを聞くと、
安心したように話し始めました。弱弱しかった光も、いつもと変わらない光の
大きさになっています。声の調子ももどっていました。
「夢ちゃん、ほんとは、去年再会した時に言おうと思ったんだけど、どうしても
言えなかった。それで、今日になっちゃったんだけど、ほんとはどうしようかなとも
思ったのだけど、でも、やっぱり大事なことなので、言っておくわ。」
声の調子はもどっても、四小の話し方は、いつもとはどこかちがうように、夢には
感じられました。四小はいつも、夢に語りかけるように優しく話すのですが、今回は、
四小らしくないまとまりのない話し方をするのです。『きっとそれは、四小さんにとって
よほどのことなのだろうな。』と、夢は四小の気持ちを察するのでした。