バスを降り、辺りを見回した夢は団地の変わりように驚いて声をあげました。
「わぁー、建て替えしてる。」
建て替えしてるのは、全棟数の三分の一ほどで、残りも建て替えするんで引っ越し
したのか、入居している部屋は数えるほどしかありませんでした。夢は、懐かしさで
胸がいっぱいでした。辺りをキョロキョロ見まわしながら団地商店街の方へ行き、
『ああ、そうそう、こうだった、ああだった。あ、あのお店、まだやってたんだ。へぇー、
ずいぶん長くやってるんだなぁ。あ、西友まだある。思い出すな、西友へおつかいに
行った日のことを。懐かしいなぁ。』
などと、思いをめぐらせていたのです。一年生の時に通った道は、あの頃のままの
姿で夢を迎えてくれました。その道を歩いて、やがて、夢は四小に着きました。
四小は、あの頃と変わらぬ姿で、そこに建っていました。とその時、パァーッと光が
射し、まぶしいほどの輝きが辺りを包み、四十三年前と同じ、あの静かで優しい声が
響いてきたのです。
「まあ、懐かしいこと。会いに来てくれたの?夢ちゃん、いいえ、もう夢さんだわね、
ありがとう。まあ本当に、すっかり大人になって、大きくなったわねぇー。」
昔と変わらぬ、静かな話し方をする四小でした。夢は、胸がいっぱいになりました。
中学生になった時、「これからは、わたしと話すこともなくなるでしょう。」と言っていた
四小です。その言葉通り、中学の三年間、四小と一言も話すことは
ありませんでした。それが、今こうして、もうすっかり大人になった夢に、四小が
語りかけてきたのです。四小は涙ぐんでいます。夢もまた涙ぐんでいました。