風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第三部)四小編 其の拾

2010-04-17 23:35:11 | 大人の童話

式は、校長先生の式辞・保護者会会長のお祝いの言葉と進み、いよいよ来賓が

紹介されます。夢は、『わたしは四小の卒業生じゃないけど、先生はなんていって、

わたしを紹介するのだろう。』と思ってどきどきしていました。すると、

「大丈夫よ。ちゃんと紹介するから。」

と、四小の声がしました。

「そうなの?」

夢が言うと、四小は

「ええ。」

と答え、「安心していなさい。」というように、微笑んでいました。夢は、それでもなお、

『どうするんだろう。』と思いましたが、四小の言葉を信じることにしました。来賓が

次々と紹介され、いよいよ夢の番です。

「本校卒業生、藤木 夢様」

夢は、驚いて声もでません。まさか、『卒業生』と紹介されるなんて。夢は感激で

胸がいっぱいになり、なにも言えませんでした。立ち上がって、卒業生の保護者の

方に、「おめでとうございます。」とあいさつするのが精一杯でした。四小は、そんな

夢の様子を見て、

「喜んでくれて良かったわ。わたしもやっと、夢ちゃんに卒業証書渡すことできたし。」

と、うれしそうに微笑みました。そうです。このサプライズは、実は、四小が

用意したものだったのです。四小が先生に、夢のことを「卒業生」と紹介するように

頼んだのです。どうやって頼んだのかは、夢にもわかりません。まあ、それはいいと

して、とにかくこれで夢は四小を卒業することができました。もちろん、実際に

卒業したわけではありませんが、夢も四小も、これで、それぞれ自分の心の

整理がついたのでしょう。式が終わって夢が帰る頃には、二人ともさわやかな笑顔に

なっていました。