式は、校長先生の式辞・保護者会会長のお祝いの言葉と進み、いよいよ来賓が
紹介されます。夢は、『わたしは四小の卒業生じゃないけど、先生はなんていって、
わたしを紹介するのだろう。』と思ってどきどきしていました。すると、
「大丈夫よ。ちゃんと紹介するから。」
と、四小の声がしました。
「そうなの?」
夢が言うと、四小は
「ええ。」
と答え、「安心していなさい。」というように、微笑んでいました。夢は、それでもなお、
『どうするんだろう。』と思いましたが、四小の言葉を信じることにしました。来賓が
次々と紹介され、いよいよ夢の番です。
「本校卒業生、藤木 夢様」
夢は、驚いて声もでません。まさか、『卒業生』と紹介されるなんて。夢は感激で
胸がいっぱいになり、なにも言えませんでした。立ち上がって、卒業生の保護者の
方に、「おめでとうございます。」とあいさつするのが精一杯でした。四小は、そんな
夢の様子を見て、
「喜んでくれて良かったわ。わたしもやっと、夢ちゃんに卒業証書渡すことできたし。」
と、うれしそうに微笑みました。そうです。このサプライズは、実は、四小が
用意したものだったのです。四小が先生に、夢のことを「卒業生」と紹介するように
頼んだのです。どうやって頼んだのかは、夢にもわかりません。まあ、それはいいと
して、とにかくこれで夢は四小を卒業することができました。もちろん、実際に
卒業したわけではありませんが、夢も四小も、これで、それぞれ自分の心の
整理がついたのでしょう。式が終わって夢が帰る頃には、二人ともさわやかな笑顔に
なっていました。