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コウノトリ100羽/繁殖地をもっと広げたい

2017-06-25 18:25:25 | 日記

 国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰に向けた取り組みが、大きな節目を迎えた。12年前に人工飼育のひなを初めて放鳥して以来、野外で暮らす100羽目が豊岡市の人工巣塔から巣立った。

 かつては田畑や里山で普通に見られたが、開発や農薬の普及などの影響で46年前に日本の空から姿を消した。一度絶滅した動物が復活を遂げるのは、世界的にも珍しい。

 長年、人工飼育に携わった兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園の努力に加え、共生に向けた地域の営みが一羽一羽を育んだ。野生復帰を軌道に乗せるため、さらに多くの巣立ちをかなえたい。

 初放鳥以来、コウノトリは豊岡周辺で繁殖を重ね、今では孫の世代の個体も見られるようになった。しかしまだ楽観視はできない。環境省のレッドリストでは、「絶滅危惧IA類」に指定されている。ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い-との意味だ。

 現在、3歳以上の個体は50羽に達するが、この状況が5年以上続いてようやく、危惧の度合いが1段階緩和される。そのためには繁殖地を広げ、ロシアや中国の野生種とも交配するなど、多様な遺伝子を持つ個体を増やす必要がある。

 注目したいのは、今年に入って徳島県鳴門市や島根県雲南市でも繁殖が確認されていることだ。鳴門からは6月上旬に3羽が巣立った。故郷を離れて新天地を探し求め、子孫を残す。野生種としての強さを発揮し始めたのは頼もしい。

 豊岡から飛び立ったコウノトリは、北海道から沖縄まで数多くの市町村で目撃されている。豊富な餌場など条件がそろえば、繁殖地がさらに増える可能性は高い。自然保護団体や自治体、研究施設などが連携を強め、生態などの情報を共有することが重要だ。

 餌となるミミズやカエルを増やすため、豊岡周辺では農薬や化学肥料に頼らない「コウノトリ育(はぐく)む農法」が徐々に広がっている。収穫したコメは環境への配慮が評価され、米国輸出が決まった。

 自然との共生は、地域にもプラスとなる。豊岡で得られたその教訓も、全国に広めたい。

2017/06/25 神戸新聞 社説


<👀も> 粉糠雨降る梅雨らしい一日だった。


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