政府は31日、お金の貸し借りや物の売り買いといった契約に関するルールについて計約200項目を見直す民法改正案を閣議決定した。保険契約やインターネット通販で使われる「約款」や、部屋を借りる際に大家に支払う「敷金」の定義を明記するなど、身近なトラブルの防止につながる改正も盛り込まれた。今国会で成立させ、2018年度までの施行を目指す。
改正案によると、生命保険やネット通販などの契約条件として示される「約款」の定義や要件を定め、消費者に一方的に不利な条項は無効とする。買った商品に欠陥があった場合、買い手は売り手に対して修繕や代金減額を求められることも明記する。
また、不動産の借り手が支払う「敷金」については、定義や返還の時期・範囲を定める。時間の経過で壁紙などが自然に劣化したとしても、借り主には退去時に元に戻す義務がないことも明確にする。
中小企業が融資を受ける際に、経営と無関係な第三者の個人を保証人とする場合は、公証人による意思確認の手続きを経ていないと無効になる。
現在は飲食店のツケなら1年、弁護士費用だと2年、病院の診療費なら3年など職種別になっている未払い金の返還請求期間(消滅時効)は、原則5年に統一して分かりやすくする。
賠償金の支払いが遅れた時のように、契約時に利率の取り決めがない場合に適用される法定利率は、現在の5%から3%に引き下げて変動制にする。交通事故被害者らが将来得られたはずの収入を賠償金として先にまとめて受け取る場合、本来の受取時期までに発生する利息分として差し引かれる「中間利息」の利率も同様に3%にする。
契約ルールの大幅改正は、1896年の民法制定以来初めて。社会情勢が変化し、判例や解釈が法の不備を補っている現状を受け、法相の諮問機関である法制審議会の部会が09年から議論を開始、今年2月に上川陽子法相に改正要綱を答申した。【和田武士】
◇民法改正案のポイント
・インターネット通販などの「約款」…消費者に一方的に不利な条項は無効
・欠陥商品…買い手が売り手に修繕や代金減額を求められる
・敷金…借り主には経年劣化の修繕費を負担する義務はない
毎日新聞 2015年03月31日
コメント
判例や解釈が法の不備を補っている現状に鑑みて、整理して分かりやすくする趣旨であろう。