気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

近代「エリート神話」は崩壊した AI登場で教育は「意味」を教えればよい 筑波大学大学院教授・古田博司

2017-06-29 16:30:57 | 日記

 今回は社会評論をする。いま日本で何が起こっているかといえば、「勉強エリートの削減」「勉強エリートの転落」「秀才万能神話の崩壊」である。これらをもたらしたのは、彼らより万能なインターネットと人工知能(AI)の登場だ。

 秀才が単なる勉強エリートなことは、藤原正彦さんがきちんと定義してくれている。「受験勉強でも偏差値の高い者は、頭がよいというより勉強法が上手い。そういう者は誰に言われなくても、最も効果的な勉強法をとっている」(週刊新潮6月15日号)

≪大学教授の大量削減が始まった≫

 勉強エリートは、勉強も仕事も要領がよくて処理能力が高いのである。大学教授はその上澄みだから本当にすごい。私が大学で行政職の末端の長をしていたとき、予算の概算要求書を東大出に丸投げすると、なんと1日でやってしまった。そういう人たちが各官庁にゴロゴロいると思った方がよい。

 問題なのはかつて近代日本が途上国だったため、彼らを牽引(けんいん)役として大量に輩出してしまったことである。今は彼らを削減するのが時代の要請だ。そこで国立大学文系の組織や予算縮小で教員の削減が必要になった。首は切れないから、移籍したり定年したりして空いたポストは埋めない。うちの文系は150人、北海道大学は200人削減である。

 次に「勉強エリートの転落」。これには「秀才万能神話の崩壊」が絡んでいる。キーワードは「正義」だ。私は東大の非常勤講師を1997年から2年間した。講義で「君たち知らないことは知らないと言わなきゃいけないよ」と言うと、反響がすごく、講義後に学生たちが「本当に言っていいんですか?」と聞いてきた。言えないので、知ったふりをして話を徐々に自分に引き寄せるのが常だという。これを私は「秀才万能神話」と呼ぶ。今でもテレビのクイズ番組などが続けているが、もうスマホで答えがすぐ手に入るのだから、やめてもよいのではないか。

≪正義まで自己主張する高慢さ≫

 そして万能は正義を要求する。本人は正しいことをしていると思い込んでいても、本当は万能ではないのだから、次々とウソをつくようになる。ウソ行為や非常識が無意識化する。東大エリート、東大助教授の輝かしい経歴を持ち、公私混同の資金の乱用が批判された舛添要一前東京都知事は、「あの騒ぎは人民裁判」と、なおも自己の正義を主張する。もう彼らは何人、埃(ほこり)にまみれ地上に落ちてきたのか。

 大震災は「まだ東北で良かった」と、言ってしまった今村雅弘前復興相や、水たまりでおんぶされて被災地を視察し、批判されると「たぶん長靴業界はもうかったんじゃないか」と言った務台俊介前内閣府政務官、出会い系バー通いを「女性の貧困を扱うテレビ番組を見て話を聞いてみたいと思った」(東京新聞6月8日付)と称し、「素朴な正義感がたたえられる」役所で「“反骨精神”は、現職時代から際立っていた」(産経新聞5月27日付)といわれていた前川喜平前文科省事務次官-。

 「旧約聖書は正義を語らない」と言ったのは山本七平だったが、聖書の神様さえ正義は語らないのだ。なぜかといえば、高慢な人間に罰や呪いを与えるのだから自分が正義だと高慢になってしまう。高慢同士では筋が通らないので、神様も失敗したときには、「わたしはサウルを王としたことを悔いる」(サムエル記上15-11)と、後悔して反省するのである。

≪「意味」を体得させる教育を≫

 さて、欧米の後進国ではなくなった日本の教育をどう考えるかである。当然インターネットやAIにできないことを教えなければならない。「東ロボくん」開発の国立情報学研究所、新井紀子さんによれば、AIは論理と確率と統計しか言葉がなく、「意味」が分からないそうである(毎日新聞12月24日付)。 

 「ネズミの脳下垂体を除去したらどうなるか」というと、人間ならば何か重大な支障が起こるはずだと「意味」を理解する。ところがAIだと、「血が出るか、死ぬか」と答えるという。要するに近代以後の教育では「意味」を教えればよいのである。

 芸術や体育は、ルール以外ではほとんどが意味の体得である。センスとか不随意筋の随意化とか、言語にできないものの「体得」である。医系ならば、群馬大学医学部付属病院の失敗が参考になる。手技を体得させればよいのである。意味のある手術はAIには無理だ。理系ならば実験である。どの実験がどんな意味を持つかはAIには絶対に分からない。

 人文社会系では何か。歴史学はどんな歴史事実を選択してそこに「意味」を見つけるかである。アクティブラーニングと称しても、契約書取り扱いまがいの模範問題しか出せない文科省は、「ゆとり教育」「ポスドク1万人計画」「法科大学院」と、すべての教育施策に失敗し、組織ぐるみの天下り斡旋(あっせん)の結果、先の前川前事務次官が辞任した。この意味を考える問題はどうだろうか。(筑波大学大学院教授・古田博司 ふるたひろし)

2017.6.29 10:00【正論】産経

 

<👀も>

  試作

http://www3.spacelan.ne.jp/~marukunn11/


「僕の方が追い詰められている」 稲田氏発言で松井・維新代表 

2017-06-28 18:26:10 | 日記

 日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は28日、稲田朋美防衛相が東京都議選(7月2日投開票)の応援で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言し、撤回したことに関連し「小池タイフーンで自民党も維新も追い詰められているけど、稲田さんより僕の方が追い詰められている」と述べ、小池百合子都知事率いる地域政党「都民ファーストの会」が都議選で勢いを保っていることへの危機感を吐露した。府庁で記者団の質問に答えた。

 松井氏は「行政のトップが公務員組織も選挙に関わるような表現をするのはだめだ」とした上で、都議選について「小池さんが正義の味方で自民党は悪役という対決に完全になってしまった。それ以外の選択肢があることを都民の皆さんが分からない状況になっている」と分析。「われわれが大阪でやっていることが伝わっていないと反省している」と述べた。

 民進党などが稲田氏の辞任を求めていることに対しては、「大臣の間違った発言をとらえて、一回一回政局にするのは日本のためになるのか。同じ間違いをやらないようにすればいいのではないか」と述べ、辞任の必要はないとの認識を示した。

2017.6.28 16:35 【東京都議選】産経


豪、海外生まれが26%に 国勢調査、進むアジア化

2017-06-27 20:08:05 | 日記

 

 【シドニー共同】オーストラリア統計局が27日発表した2016年の国勢調査で、海外生まれが全体の約26%を占め、うちアジア出身の割合が英国など伝統的な欧州出身を初めて上回った。前回調査の11年以降に移住してきた130万人の内訳では中国、インドが増加しており「アジア化への節目だ」(地元紙)との見方も出ている。

 毎年多くの移民を受け入れ、多文化主義を国是とするオーストラリア。自身か両親の一方が海外生まれは約49%になり、両親がともに国内生まれの割合にほぼ並んだ。全体の5分の1が家庭で英語以外を話し、使用言語は約300。昨年末の人口は約2千440万人。

2017/6/27 17:14 共同通信


<👀も> 海洋丸の船長に約束してあった釣り竿3本ほか釣り道具を届けてきた。

 迷路のような海辺の道を走っていたら行き止まり。Uターンしようとしたら、目の前に(古民家)茶房 「ふれあい」とある。入ってみたらなかなか良い雰囲気であった。食事も出る。1500円でたっぷりとある。数人~十数人を案内しても十分入れる、恥ずかしくないところだった。アルコール類もカラオケもあった。

  マスターは羽咋市 かほく市 横山のことなど{なんで?」と、思うほど良く知っていた。会話は途絶えなかった。 

「この辺に来ることある?」と、聞かれたが「いや」。釣りに来ることは言わなかった。・・・話が長くなりそうだったから。

 渡された名刺には 

ふれあい 

志賀町赤住8の5の1(岡崎民宿様のとなり) 

tel 0767-32-1871 

営業時間 午前11時~午後9時(延長可能)

とある。

 忌憚のないマスターだった。

  

 


埋められた毒 中国が隠す土壌汚染

2017-06-26 18:09:25 | 日記

 中国政府は、大気汚染や水質汚染については積極的に公表してきた。これらの汚染は目に見える形で現れ、隠しにくいからだ。それでも中国政府が、大都市の大気におけるPM2.5(空中を浮遊し、肺の奥深くに入り込んで健康を損なう微小粒子状物質)の濃度をリアルタイムで公表し始めたのは13年で、国民の怒りの高まりを受けた末のことだった。

 15年には中国人ジャーナリスト、柴静(チャイ・ジン)氏が中国の大気汚染を告発するドキュメンタリーをネット上で公開したが、閲覧回数が2億を突破すると政府による検閲でサイトから削除された。

 中国政府は国民の不安をよく認識している。14年に李克強首相は、「環境汚染を絶対に克服してみせる」と宣言した。

 16年には中国政府は、土壌汚染地の90%を20年までに利用可能な状態にするという実現不可能とも思える計画を発表した。そして同年3月、李首相は「われわれの空を再び青くする」と約束し、16年のPM2.5の濃度は「顕著な」低下を記録するだろうと述べた。

■隠蔽主義をやめるべき

 そうした動きは大歓迎だ。しかし、中国が地球環境保護で世界のリーダー役を果たそうというのであれば、風力発電や太陽光発電の施設建設だけでは足りない。自国が抱える様々な他の環境問題についても明らかにしていくことが必要だ。その上で、他国にも同じことを要求していくべきだ。

 パリ協定を成功させるためには、透明性が不可欠な要素となる。地球温暖化防止のために何か約束しても、実際に行われているかどうかを検証できないなら、共通の目的に向かって加盟各国を結束させることはできない。

 地球環境問題で指導的立場に立つためには、中国政府はパリ協定が定める義務以上に踏み込んで、自ら自国のCO2排出量を国際機関に計測させるのも一案だろう。少なくとも、自国民の健康にかかわるような差し迫ったほかの汚染問題についても隠蔽主義をやめるべきだ。

 そうした情報を公開していけば、中国の国民は自分たちがどんな危険にさらされているかを理解できる。そして政府高官らに環境汚染を止めるよう責任を果たさせることができるようになる。

 「エコノミスト」を読んでくれている北京の市民たちは、太陽の光がどんなものか、もはやぼんやりとしか覚えていないかもしれない。だが、隠されているものを明るみにする光こそが、最も有効な汚染対策と言えるはずだ。

(c)2017 The Economist Newspaper Limited. June 10-16, 2017 All rights reserved.

2017/6/26 6:30 日経

▼ 「水の国」キャンペーンが泣く、濁る世界遺産・熊野川…清流イメージ無残、茶褐色の川に観光客あ然

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の観光スポットである「熊野川」の濁りが止まらない。かつての「鮎がすむ清流」のイメージは見る影もなく、茶褐色のドロリとした流れが岩を洗っている。上流の脆弱(ぜいじゃく)な岩盤からの崩落が原因とみられるが、あまりに広範囲すぎて抜本的な対策も打てない。県も一時、「絵的に厳しい」と川の写真や説明を観光パンフレットから外したほどだ。自然と人智の闘いは終わりが見えない。(菊池昭光)

清らかな水の道は…

 「あの川の色は何? いつも濁っているの?」。宮崎県日向(ひゅうが)市から観光に来た女性公務員(57)は熊野川を見て驚いた。確かに台風や集中豪雨の時のように茶褐色に濁った水流は、見る人にそんな疑問を抱かせるだろう。

 流域が奈良、和歌山、三重の3県にまたがる熊野川。熊野灘に流れ込むまでの熊野本宮大社~熊野速玉大社間の流域は、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されている。大和地方から貴族や豪族、庶民までが熊野本宮大社から熊野速玉大社まで船を使って参詣したことから、「水の古道」とも呼ばれるが、現在、その清らかな水の道は見る影もない。

弱い岩盤とダム

 《国土交通省のホームページによると、熊野川は奈良県天川村の山上ケ岳(標高1719メートル)が水源で、長さ183キロ、流域面積236平方キロ。流域の土地利用は、森林が約95%、水田や畑地などの農地が約1・5%、宅地が約0・5%、その他が約3%》

 熊野川には、奈良県十津川村を縦断する「十津川水系」と、和歌山県の飛び地の北山村から流れ下る「北山川水系」があり、新宮市熊野川町で合流している。濁っているのは十津川水系で、北山川水系は観光客に人気の瀞峡(どろきょう)を抱く清流で透明度も高い。

 なぜ十津川水系だけが濁るのか。第1の要因として、川岸の岩盤の弱さが指摘されている。河口に位置する新宮市によると、常時、無数の崩落が起きており、土砂がダムや河川に流れ込むことによって濁りが生じているというのだ。特に平成23年の紀伊半島豪雨以降、濁りが激しくなり、豪雨発生前の2倍になったという数値も確認されている。

 第2の要因は、電源開発(Jパワー、東京)が管理する奈良県十津川村の風屋ダムと二津野(ふたつの)ダムの存在が挙げられている。ダムにたまった水が濁り、深層部は汚泥がたまっている状況だ。(以下省略)

 濁りのひどい十津川水系(右側)と清流の北山川水系(左側)の合流地点。透明度の違いが分かる=和歌山県新宮市熊野川町

2017.6.26 09:00 産経west

<👀も> 藤井四段 × 増田四段 が対戦中。 藤井四段が29連勝をかけた歴史的対戦。囲碁将棋チャンネルで中継中


コウノトリ100羽/繁殖地をもっと広げたい

2017-06-25 18:25:25 | 日記

 国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰に向けた取り組みが、大きな節目を迎えた。12年前に人工飼育のひなを初めて放鳥して以来、野外で暮らす100羽目が豊岡市の人工巣塔から巣立った。

 かつては田畑や里山で普通に見られたが、開発や農薬の普及などの影響で46年前に日本の空から姿を消した。一度絶滅した動物が復活を遂げるのは、世界的にも珍しい。

 長年、人工飼育に携わった兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園の努力に加え、共生に向けた地域の営みが一羽一羽を育んだ。野生復帰を軌道に乗せるため、さらに多くの巣立ちをかなえたい。

 初放鳥以来、コウノトリは豊岡周辺で繁殖を重ね、今では孫の世代の個体も見られるようになった。しかしまだ楽観視はできない。環境省のレッドリストでは、「絶滅危惧IA類」に指定されている。ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い-との意味だ。

 現在、3歳以上の個体は50羽に達するが、この状況が5年以上続いてようやく、危惧の度合いが1段階緩和される。そのためには繁殖地を広げ、ロシアや中国の野生種とも交配するなど、多様な遺伝子を持つ個体を増やす必要がある。

 注目したいのは、今年に入って徳島県鳴門市や島根県雲南市でも繁殖が確認されていることだ。鳴門からは6月上旬に3羽が巣立った。故郷を離れて新天地を探し求め、子孫を残す。野生種としての強さを発揮し始めたのは頼もしい。

 豊岡から飛び立ったコウノトリは、北海道から沖縄まで数多くの市町村で目撃されている。豊富な餌場など条件がそろえば、繁殖地がさらに増える可能性は高い。自然保護団体や自治体、研究施設などが連携を強め、生態などの情報を共有することが重要だ。

 餌となるミミズやカエルを増やすため、豊岡周辺では農薬や化学肥料に頼らない「コウノトリ育(はぐく)む農法」が徐々に広がっている。収穫したコメは環境への配慮が評価され、米国輸出が決まった。

 自然との共生は、地域にもプラスとなる。豊岡で得られたその教訓も、全国に広めたい。

2017/06/25 神戸新聞 社説


<👀も> 粉糠雨降る梅雨らしい一日だった。


小林麻央さん死去 市川海老蔵さんの妻、フリーアナウンサー 

2017-06-23 17:15:58 | 日記

「がんが憎い」三原じゅん子参院議員がブログで発信 自らも闘病経験 歌手の平原綾香さんは長文の思い出綴る

 歌舞伎俳優の市川海老蔵さん(39)の妻で、乳がん闘病中だったフリーアナウンサーの小林麻央さんが死去したことが分かった23日、自民党の三原じゅん子参院議員(52)は、「がんが憎い」と題したブログで「ショックで涙が出て来た。ご家族のこれからを思うと無念でしょう。小林麻央さんの笑顔を忘れません。合掌。」と短い文章に無念さを込めた。

 三原議員は、子宮頸(けい)がんで闘病生活を送った経験などから、子宮頸がん予防ワクチンの接種・検診の無料化など医療・福祉を中心に政治活動を行っている。

 漫画原作者の小池一夫さん(82)はツイッターに「小林麻央さんがお亡くなりになった。テレビやネットでしか知らない方だけれど、とても悲しい。しかし、小林麻央さんのように有名な方でなくても、毎日毎日、病と闘っている方々は沢山いる。自分も含め、その闘っている人たちが、戦いに勝てることを心から祈る」と投稿した。

 また、歌手の平原綾香さん(33)はブログに「小林麻央さん」と題し、「思い出のすべてが宝物です」と思いのたけをつづった。平原さんのブログ全文は次の通り。

 「小林麻央さん 本当に大好きでした いろんな思い出があって 1つ1つが かけがえのない瞬間だったと 今 かみしめています」

 「麻央さんと長岡花火の復興祈願花火 フェニックスを取材して 一緒に泣いたこと 麻耶さんと一緒に コンサートに来てくださったこと 麻央さんのリクエストで 結婚披露宴とコンサートを生中継で繋いで Jupiter を歌わせていただいたこと お着物姿で、事務所まで ご挨拶に来てくださったこと 思い出のすべてが 宝物です」

 「ご家族の方々のお気持ちを思うと 何も言えません けれど  麻央さんは これからもずっと 私たちの中にいます 麻央さん 本当に 本当にありがとうございました これからもずっと 大好きです」

 「昔 麻央さんからいただいた モコモコのパーカー 今でも  大切に着ています どうか ずっと見守っていてください」

 

2017.6.23 11:25 産経


<所感> 若い命が消えた。海老蔵さんともども壮絶な闘病生活であったであろう。真央さんがブログを書き始めたことに思いをやると、愛(優しさ、思いやり、強さ、勇気)を感じとれる。 ーーー絶句ーーー


われこそは正義の味方とばかりにかさにかかっている新聞や野党、ご都合主義が過ぎる

2017-06-17 17:05:59 | 日記

 自分たちの過去の言動は忘れ、高飛車に他者を非難する。そんな新聞や野党の二重基準には、つくづくうんざりする。学校法人加計学園の獣医学部新設計画をめぐり、義家弘介文部科学副大臣が、文書を流した文科省職員を守秘義務違反で処分する可能性に触れたところ、袋だたきに遭った件である。

 ▼「政権は文書の存在を語る者の口を封じるような行いさえした。(中略)考え違いもはなはだしい」。16日付朝日新聞社説がこう批判すれば、同日付毎日新聞社説も息を合わせて糾弾する。「告発への威嚇ともとれる発言だ。政と官の関係のゆがみの表れだろう」。

 ▼民進党の蓮舫代表も「保護しないといけない者を処分の対象とする。安倍晋三内閣の姿は、絶対に許してはいけない」と息巻いていた。われこそは正義の味方とばかりにかさにかかっているが、ご都合主義が過ぎる。

 ▼平成22年9月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で、中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりする事件があった。当時の民主党の菅直人内閣は海保が即日公開する予定だった衝突映像を隠蔽(いんぺい)したため、海上保安官だった一色正春氏が義憤にかられ、映像をインターネットに流した。

 ▼この時、朝日社説は「政府や国会の意思に反することであり、許されない」、毎日社説は「国家公務員が政権の方針と国会の判断に公然と異を唱えた『倒閣運動』でもある」と決め付けた。菅内閣の仙谷由人官房長官は「由々しき事件だ。徹底的に調べないといけない」と強調していた。

 ▼菅内閣の「ご意向」に反する公務員はけしからんと説いた新聞が、今では文書を漏らした職員を英雄扱いして持ち上げている。民進党ともども前非を悔いて、一色氏に謝罪して出直したらどうか。

2017.6.17 【産経抄】


「ソリテス・パラドックス」という逆説がある…

2017-06-15 18:05:16 | 日記

 「ソリテス・パラドックス」という逆説がある。ソリテスは「積み上げられた物の」という意味だが、日本では「砂山のパラドックス」ということが多い。砂山はその砂を1粒取っても、砂山なのは変わらない。

▲さらに1粒、また1粒取っても砂山だが、いつか最後の1粒になっても砂山かといえばもちろん違う。では何粒以上が砂山だと決めようにも線引きができない。砂山という言葉のあいまいさと連続的な変化の間に生まれる逆説である。

▲「組織的犯罪集団」と「一般人」とは縁遠く聞こえる。だがこれも砂山と同じく線引きできないあいまいな言葉だと明らかにしたこの間の国会論戦だった。共謀罪あらためテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案の審議のことだ。

▲政府答弁の示すところ、一般人は捜査対象でないとの説明は当局が捜査対象にしない人は一般人だというのにすぎぬようだ。法相が捜査対象に新たに組織的犯罪集団の「周辺者」を持ち出すはめになったのも境界のあいまいさからだ。

▲審議を通じて国際条約締結に不可欠という説明にすら疑義が生じたこの法案だった。なのに摘出された疑問はすべて放置したまま、参院委採決を省略しての本会議での採決だという。審議は形だけの儀式かと慨嘆する方も多いだろう。

▲異例の国会運営の背景には加計問題追及の舞台となる会期の延長を避けたい政権与党の思惑があるという。国会が政府の専横を抑止する民主主義の砂山からごっそりと砂の固まりを取り去っていくのは誰か。

毎日新聞2017年6月15日 東京朝刊

<所感> テロ等準備罪は国民にとって両刃の剣ではなかろうか。

<👀も>

 


外国人の手を借りて日本を貶める日本人の了見

2017-06-14 18:00:22 | 日記

 外国人の手になる日本論は、おびただしい数にのぼる。アメリカ文学者の佐伯彰一さんは、この種の書物を求めて、国内外の古書店を訪ね歩いた。「こちらの思いもかけぬ角度からの照明、細部への注目に、はっと驚かされ、その都度眼を開かれる」からだという(『外国人による日本論の名著』)。

 ▼米カリフォルニア大アーバイン校教授のデービッド・ケイ氏の「日本論」には、まったく違う意味で驚かされる。表現の自由に関する国連特別報告者としてまとめた「対日調査報告書」は、誤解と偏見に満ちていた。たとえばケイ氏は、政府当局者からの直接、間接の圧力によって、メディアの独立性に懸念がある、と指摘する。

 ▼何を証拠に決めつけるのか。どこかの国のように、政府に批判的なジャーナリストが、殺害されることはない。デモに参加しただけで、拘束されることもない。ケイ氏は昨年4月、政府の招待で来日した。たった1週間の情報収集だけで、報告書はまとめられた。

 ▼優秀な通訳の助けを借りて、せめて新聞や雑誌、テレビの報道を精査してほしかった。メディアがどれほど多様な情報や意見を伝えているか、実感できたはずだ。慰安婦問題や組織犯罪処罰法改正案についても、事実誤認がある。

 ▼日本政府の説明には、一切耳を傾けなかった。最初から結論ありきだった、と勘ぐりたくもなる。何より理解に苦しむのが、ケイ氏に偏った情報を吹き込んだ、日本の市民活動家や報道関係者の了見である。

 ▼外国人の手を借りて、国際社会で日本のイメージを貶める行為に、どんな意味があるのだろう。もっとも、彼らの行動原理を分析したら、それはそれで興味深い「日本人論」が出来上がるかもしれない。

2017.6.14 【産経抄】

 

▼ 米ヤフー「解体」の意味するもの


日本版GPS衛星が描く地図の未来は

2017-06-11 22:05:02 | 日記

 水上勉の『飢餓海峡』は推理小説だが、風景描写にも筆致の妙味がある。「ヒバ、杉、黒松などのいり混じった林は、上の方へゆくほどに黒々と…」「樹肌にからみついた蔦(つた)や藤の葉だけが、茶褐色に色づきはじめていた」と筆が行き届いている。

 ▼青森・下北半島の点描である。丹念な現地踏査の産物とばかり思っていた。違うらしい。「五万分の一の地図で書きました」と、ある対談で種を明かしていた。下北には行ったが、山奥までは行っていない。杉や松などの立ち木は、みんな地図に書かれている-と。

 ▼等高線を見るだけで、山の形状や眺望が目に浮かぶ。そんな地図読みの手だれも多いと聞く。文才も豊かな水上は、右脳と左脳を存分に使いこなしたに違いない。等高線を習った子供時分、地図とわが指を見比べた記憶しかない小欄には、ピンと来ない能力である。

 ▼地図の未来はどうなるだろう。日本版GPS(衛星利用測位システム)の本格運用が近い。先日は、測位用衛星の2号機が打ち上げられた。6年後には7基体制となり、位置情報の誤差はわずか6センチになるという。車の自動運転など暮らしやすさにつながればいい。

 ▼いまや電脳空間で地図を開けば、その土地の道も建物も写真で見られる時代になった。「知らない町」へのあこがれに胸を躍らせることも少ない昨今だが、〈新しき地圖(ちず)ひろげ讀(よ)むたかぶれるこころ少くなりたる日々に〉(扇畑利枝)の感覚はやはり忘れたくない。

 ▼万緑の季節である。分厚い時刻表や使い古した地図を抱えて、夢想の旅に出かけるアナログ世代も多いことだろう。図面に引かれた等高線に、鳥のさえずりや小川のせせらぎを聞くことのなかった小欄も、ここは「紙の地図」に一票を投じておく。

2017.6.11 【産経抄】

 

<👀も> 日本版GPS(衛星利用測位システム)は6年後には7機体制となり位置情報の誤差は6センチになる、とのこと。

 

 ・昨日は人との出会いが実に多い日であった。10時に就寝して12時に目覚めて今の時刻に至る。半年ぶりである。焼酎飲んで肉を食っておなかを満たす・・・二時間ほどたてば眠気がくるだろう。

 

 

 重篤な病状の老夫婦が、遠距離でそれぞれ独居生活をする。

 抗がん剤は拒否、新たな転移部位を探すのは不要。

 それぞれの生を全うする「覚悟」。

 別れの握手をしてから、彼が合掌した。はじめて見た。これまでは、寅さん風の別れの挨拶だったが。

 岡崎の山寺の次男坊と生まれて、大学卒業後、大手生命保険会社に就職して24歳で管理職となり1~2年で関東以西を転勤。日本の高度成長期に丁度合致する。

 飲む、打つ、買う(?)の二~三拍子はそろっていた。その彼が合掌である。

 信念、信条、心情は人それぞれであるが、彼から学ぶことは多かった。

 

「ミヤちゃん」と元気な声をもう一度聞きたい!

 

6月12日(月)

0時

晴れ

晴れ

15℃

3時

晴れ

晴れ

13℃

6時

晴れ

晴れ

14℃

9時

晴れ

晴れ

17℃

12時

晴れ

晴れ

20℃

15時

曇り

曇り

19℃

18時

晴れ

晴れ

16℃

21時

晴れ

晴れ

15℃

 

6月13日(火)

曇り

曇り

21℃/13

20

6月14日(水)

晴時々曇

晴時々曇

23℃/14

20

6月15日(木)

晴時々曇

晴時々曇

25℃/14

20

6月16日(金)

晴時々曇

晴時々曇

27℃/16

20

6月17日()

曇時々晴

曇時々晴

26℃/18

30

6月18日()

曇時々晴

曇時々晴

26℃/17

30


至尊(天皇)といえども…

2017-06-10 21:44:10 | 日記

 「至尊(しそん)(天皇)といえども人類なれば、その欲(ほっ)せざる時には何時にてもその位より去るを得べし」。こう主張したのは皇室典範を起草した井上毅(いのうえこわし)だった。1887年、東京・高輪の伊藤博文(いとうひろぶみ)邸での会議の席である。

▲典範草案は天皇が重患の時には譲位を認めたのに対し、伊藤は「天皇の終身大位に当たるは勿論なり」と譲位を否定した。井上の先の言葉はそれへの反論だが、伊藤は天皇の個人意思に皇位を委ねるべきでないと譲位規定を削除する。

▲こうして国民はもちろん天皇の目も届かぬ元勲たちの会議で決められた皇室典範は近代の天皇の退位を認めなかった。そして今、実に200年ぶりとなる天皇の退位を実現するための特例法を成立させたのは主権在民下の国会だった。

▲元勲らの議論のいう「人類」たる天皇と安定を要する国家制度の皇位との矛盾を宿した近代天皇制である。象徴天皇のあり方を身をもって示してきた天皇陛下が、「おことば」ににじませたのは現代民主国家におけるこの問題だった。

▲「国民の理解と共感」がキーワードとなった以後の議論である。退位は皇室典範改正でなされるべきだとの筋論は最後まで残ったが、国会は「将来の先例になりうる」との政府答弁をふまえて特例法を“国民の総意”へとまとめあげた。

▲主権者たる国民一人一人が象徴天皇制のあるべき姿を陛下の歩みを振り返りながら考えたこの10カ月だ。付帯決議のいう皇位の安定的継承にむけた今後の取り組みも、むろん元勲なしでやっていける。

 

<👀も> 近藤さんから電話あり

 「誰だかわかる?」「・・・近藤さんでしょ。今どこですか?名古屋or金沢?」「金沢にいる」。「じゃ、顔を見に行っていいですか?」「足も手も動かなくなって、ミヤちゃんに教えてもらったインターネットで囲碁をしているだけ、息をしているだけ。インターネットを教えてもらってありがとう」

 6年ぶりの会話である。

 「足も手も動かなくなって、息をしているだけ」「明日帰る」と聞いたので、これは顔を出してこなくちゃと夕方お邪魔してきた。玄関には鍵がかかっていたので、携帯で伝えたら、「今、開けるよ」。奥さんが出てきて「私も膵臓がんで肺に転移していて余命数か月と言われている。主人には内緒にしてある」とのこと。見たところ元気そうであったが。

 とにかく、家に上がってご対面。やせ細っていて、声も小さい。「来てくれてありがとう」と握手を求められた。

 こんな場での話のタネは?と考えて、かって、穴水での楽しかったことを話題にした。

 「別荘とクルーザーとキャンピングカーをもっている者は今もなかなかいないよ」と彼は言う。

 小生がヨットを持ったのは彼に勧められてのことだった。「いつでも使っていいよ」と別荘のカギを渡されていた。

 昼は、午前に釣った魚の刺身と買い込んだ肉でのバーべキューがマリーナでのお決まりだった。近藤さんはビールや酒の横綱級だった。夕時になって別荘に移って、ビールや酒を飲みながら囲碁をしたあと、備え付けのカラオケもお決まりのコースだった。キャンピングカーで軽井沢~草津温泉~白根山~妙高へも行った。

 しがないサリーマンであった小生が出来る経験ではない。近藤さんのお蔭さんである。

 彼は月、水、金とリハビリに通っているとのこと。リハビリしている仲間に気に食わない人がいるからと、リハビリ施設を何か所も変わったとの奥さんの言。「今のところも気に食わないのがいるよ」と彼が言う・・・・。

 「金沢へ来たら知らせてね」と言って席を立った。玄関の外で奥さんが自分の病状や覚悟を5分ほど明るく話された。奥さんは、看病に行っていた名古屋から住所を移したとのこと。

 人生の終末は人それぞれの態様があると思いながら帰ってきた。 


アジサイは長寿の花

2017-06-09 22:37:22 | 日記

 「朝の詩(うた)」の欄にアジサイをテーマにした作品が登場すると、そろそろ梅雨の季節である。今年も例外ではなかった。「紫陽花は雨の中 ただただ静かに その身を濡らす」。今月3日に掲載された、「紫陽花のような」の一節である。作者は、雨に打たれながらもけなげに咲く花に、自らの人生を重ねていた。

 ▼日本原産のアジサイは、もともと「あづさあい」と呼ばれていた。「あづ」は集まる、「さあい」は藍色を意味して、青い花が集まった様子を表している。唐代の中国の詩人、白楽天が「紫陽花」と名付けて、漢字表記が日本に伝わった。実は白楽天が愛(め)でたのは別の花だったらしいが。

 ▼アジサイはかつての日本では、それほど人気のある花ではなかった。理由の一つが、白から赤や青に次第に花の色を変えていく特徴である。「七変化」の別名があり、心変わり、無節操に通じるとされていた。

 ▼万葉集には、アジサイを例に引いて人に欺かれたことを嘆く、大伴家持(おおとものやかもち)の歌がある。明治になっても、正岡子規は、「紫陽花やきのふ(昨日)の誠けふ(今日)の嘘」と詠んでいる。アジサイのイメージがプラス方向に変わったのは、戦後になってからだ。

 ▼アジサイの色が変わるのは、細胞に老廃物がたまる、いわゆる老化が原因だという。もちろん他の植物も同じように老化する。アジサイほど目立たないだけだ。何より花の寿命が極めて長いために、色の変化をたっぷり楽しむことができるというわけだ(『アジサイはなぜ七色に変わるのか?』武田幸作著)。

 ▼「花の命はけっこう長い」とテレビCMでも歌われている。年齢を重ねても、別の魅力を発揮できる。長寿社会で、アジサイがもてはやされるのも当然かもしれない。

2017.6.9 【産経抄】

 

▼ 天皇退位、特例法が成立 一代限り退位容認

▼ 日本は『北は世界の孤児だ』と思っているが、実態は違う」 吉川元偉前国連大使

http://www.sankei.com/politics/news/170609/plt1706090009-n1.html



<👀も> 今日の教室でカメラ教室の話を聞いた。

 美しい月と美しい雲の夜空である。思い出したように、カメラを取りに行ったが、その間に雲はどこかへ行ってしまった。今日は満月の日だった。


 


卓球世界制覇への道

2017-06-08 16:56:56 | 日記

 全国の子供将棋教室に、入会申し込みが殺到している。もちろん、23連勝中の藤井聡太四段の活躍によるものだ。卓球場に通う子供たちも、急増しているのではないか。

 ▼世界選手権で日本選手は、石川佳純、吉村真晴組の混合ダブルスの金をはじめ、メダル5個を獲得した。リオデジャネイロ五輪を上回る成績である。13歳の張本智和選手の快進撃にも目を見張った。ただ、かつての「卓球ニッポン」の実力はこんなものではない。

 ▼世界選手権の団体戦で男子は1954年大会から5連覇、女子は57年から4連覇を達成している。シングルスでも、後に国際卓球連盟会長を務める荻村伊智朗選手らが世界王者に輝いた。もっとも60年代に入ると、中国の台頭を許し長い低迷期に入る。

 ▼街の卓球場では閑古鳥が鳴き、「卓球はネクラ」とタモリさんのギャグにもなった。当時、日本卓球協会の幹部だった荻村さんはこれに発奮、改革に乗り出した。ルールを改正し、ユニホームを明るい色にするなどイメージアップを図る。同時に若手育成に努めた成果が、ようやく実を結んだ。

  ▼日本初の卓球人は夏目漱石だった。英国留学中の1901年3月の日記に、「夜ロバート嬢トピンポンノ遊戯ヲナス」との記述がある。昨年刊行された『卓球アンソロジー』(田辺武夫著、近代文芸社)は、こんな興味深いエピソードが満載である。94年のアジア大会で、荻村さんが監督、コーチ陣に送った激励のメッセージも収録されている。

 ▼「一歩一歩確実に世界制覇を実現するよう、お願いします」。病床にあった荻村さんは2カ月後、62歳で亡くなった。中国を倒して、世界王座を奪還する。3年後の東京五輪が、荻村さんの悲願を果たす舞台となる。

2017.6.8 【産経抄】


言論の自由における二重基準

2017-06-07 17:19:57 | 日記

 組織犯罪処罰法改正案に反対してきた日本ペンクラブは、鬼の首を取ったかのようである。「日本における表現の自由とプライバシーの権利を脅かすものになる」。5日の記者会見で、ジェニファー・クレメント国際ペン会長の声明を発表していた。

 ▼はて、面妖(めんよう)な。クレメント氏の母国メキシコでは、麻薬犯罪組織による記者殺害が相次ぎ、廃刊に追い込まれた新聞社さえある。国際ペンが本部を置くロンドンでは今、イスラム過激派によるテロの嵐が吹き荒れている。法改正の内容を理解していれば、出てくるはずのない声明である。

 ▼日本ペンクラブには、もっと身近な言論弾圧に注目してもらいたい。言うまでもない。一橋大学の学園祭で予定されていた作家、百田尚樹さんの講演会が、中止に追い込まれた一件である。一部の団体から強力な圧力がかかり、大学の一部教員からも中止を求める声が出ていたという。

 ▼大学祭といえば平成14年の慶応大学の三田祭でも、台湾元総統・李登輝氏の講演会が取り消される事件があった。どこから圧力がかかったのか、言わずもがなであろう。市民団体による組織的な抗議電話などで、識者の講演会が中止に追い込まれるケースは、大学に限らない。

  ▼櫻井よしこさんや故上坂冬子さんらは、何度も“被害”に遭ってきた。ただ朝日新聞などは、リベラル派文化人の言論活動が妨害されると大騒ぎするものの、保守系文化人が同じ目に遭っても、それほど関心を示さない。奇妙な二重基準がまかり通っている。

 ▼「あなたの意見には反対だ。だが、あなたがその主張を行う権利は、命をかけてでも守る」。フランスの哲学者、ボルテールの有名な言葉が日本で実現するのは、いつの日のことか。

2017.6.7 【産経抄】


歯の旧字「齒」は口の上下に…

2017-06-06 19:22:40 | 日記

 歯の旧字「齒」は口の上下に歯がならぶまことに分かりやすい象形文字である。この字が歯そのもののほか年齢の意味で用いられたのは、もともと動物のそれを歯で判別したからという(白川静(しらかわしずか)著「常用字解」)。

▲この漢字が生まれた当時の甲骨文(こうこつぶん)にすでに歯を病むかどうかを占った文がある。昔の人にとって虫歯などは深刻だったのだろう。また論語で「歯(し)を没す」とあるのは命が尽きるとの意味だった。年齢といってもこちらは寿命であろう。

▲「人は歯をもって命とするゆえに、歯という文字はよわいともよむなり」というのは江戸時代の本草(ほんぞう)学者、貝原益軒の言葉である。昔の人が歯を寿命と関係深いものと考えたのは、日ごろの実感にてらして分かりやすいところである。

▲厚生労働省の推計によると、80歳で自分の歯が20本以上ある人の割合が昨年初めて半数を超えたという。「20本」は入れ歯なしでほとんどの物が食べられる目安で、入れ歯と縁のないお年寄りがどんどん増えているということらしい。

▲この「80歳で20本以上」の高齢者、1993年には1割程度だったが、2005年には4分の1近くになり、今回5割を上回った。この急増、歯磨き粉の成分改良に加え、1日に複数回歯を磨く高齢者が増えているためのようである。

▲漢文に出てくる言葉で「歯徳(しとく)」というのがある。高齢になるとともに徳が成就することで、徳の高い年長者その人をもいう。それぞれ歯のケアにいっそう気を配ることでめざしたい「歯徳の国」である。

毎日新聞2017年6月6日 東京朝刊