米カリフォルニア大のエイムズ教授は、野菜に自然由来の発がん性物質が多く含まれている事実を示した。その教授が、サラダをもりもり食べている。制がん性のある物質や他の栄養素もあり、食べないわけにはいかない。
▼『環境リスク学』(日本評論社)の中に出てくるエピソードである。著者の中西準子さんの名前は、昨日の東京都議会百条委員会で、石原慎太郎元都知事の証言の中にも出てきた。野菜が安全か危険か、決めつけるのは難しい。環境問題はそんな目に見えないリスクに満ちている。リスク評価を専門とする中西さんによると、リスクには3種の大きさがある。
▼第1が科学的に得られたリスクの大きさ、第2が意思決定のリスクの大きさ、第3が国民の抱く不安としてのリスクの大きさだという。築地市場の豊洲への移転問題では、第1のリスクの大きさは、すでにはっきりしている。
▼豊洲市場の地下水から、環境基準の100倍のベンゼンが検出された。ただこの基準値が伝えるのは、人が2リットルの水を70年間飲み続け10万人に1人ががんになるという、ほんのわずかなリスクである。市場で地下水を利用することもない。専門家会議は、「科学的には安全」との評価を下した。
▼小池百合子都知事は、第3のリスクの大きさと向き合いながら、第2のリスクの大きさを選びとらなければならない。そろそろ移転について、判断を示す時期である。
▼豊洲に決まった経緯は、まったく別の問題だ。とりわけ78億円と858億円、元の所有者の東京ガスと東京都が土壌汚染対策に費やした金額の違いの理由を知りたい。もっとも、百条委員会の証人の話を聞いていると、「科学的」な解明から遠ざかるばかりのように思える。
2017.3.21 【産経抄】
◆ 民進、共産、市民団体「話し合うだけで罪」と扇動に必死
「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の審議では、一般人が取り締まりの対象にならないと分かりやすく説明できるかが焦点となる。「話し合うだけで罪になる」との不安をあおる反対派との世論戦もカギを握る。
民進党有志議員は21日、国会内で記者会見を開き、法案を糾弾した。真山勇一参院議員は、通常の団体であっても組織的犯罪集団に「一変」した場合は捜査対象になり得ることについて、こう訴えた。
「『一変』が広く解釈され、普通に仲間が集まって話をする過程によっては事前に危険を予防するとの理由で規制が出てくる。私たちの自由が奪われ、監視社会になる危険性を含む」
「一変」の認定は困難を伴う。一方、犯罪集団を放置するわけにもいかない。反対派は「恣意的な運用」を懸念するが、犯罪防止のために捜査当局は今も任意捜査を行っている。テロ等準備罪だけを恣意的に取り上げた批判でしかない。
反対派の市民団体はさらに曲解に満ちている。21日に国会内で開かれた抗議集会で、反対派の弁護士や大学教授らは「どんな市民団体も狙い撃ちされる」「私たちにやいばが向けられた」と極論を展開。民進党議員も参加し、小川敏夫元法相は「廃案に追い込む」と意気込んだ。
対象を単に「団体」とした共謀罪と異なり、今回は組織的犯罪集団に限定し、一般人には適用されない。下見などの準備行為も要件としたが、反対派の市民団体は21日に官邸前で行った集会で、いまだに「話し合うことが罪になる共謀罪NO」の横断幕を掲げた。14日に国会前で行われた集会でも、共産党の山下芳生副委員長は「同僚と一杯やりながら『あの上司ムカつくね、今度やっつけてやろう』と合意したら罪になる」と決めつけた。反対派にはこうした曲解と扇動の言説があふれている。(田中一世)
2017.3.21 産経
<所感> みんなでつくる世の中だから難しい。中庸とは目指す方向である。喜楽もまた目指す方向である。