選挙は、武器を使わない言葉による戦争である。演説、パンフレットはもとより、知恵の限りを尽くして票をかき集める。1票でも多く票を集めた方が勝ち、という単純極まるルールで行われたスコットランド独立を問う住民投票は、「選挙戦」の名にふさわしい戦いだった。
▼住民投票実施を認めたキャメロン英首相への風当たりはいまだに強いらしいが、雨降って地固まる。賛成、反対両派が正々堂々と戦ったおかげで、スコットランドの知名度はぐんと上がり、おまけに日本の株価まで上がった。
▼メディアの役割も大きかった。英BBC放送が、「反対派優勢」と出た世論調査の結果を大きく扱わず、各地の投票所ごとに発表される正式な開票結果の速報に徹していたのはひとつの見識だった。
▼人口の少ない地方から開票が進み、「勝った、負けた」で、両陣営が一喜一憂するさまを丁寧に伝えていた。空も白み始めたころ、大票田である都市部の票が開いた時点で「反対派勝利確実」の速報を流したが、忘れかけていた選挙報道の醍醐味(だいごみ)を思い出させてくれた。
▼いつのころからか日本のほとんどのテレビ局は、投票が締め切られると同時に、出口調査に基づいた議席予想をするようになった。近年は調査の精度もあがり、どのチャンネルに変えても予測はほぼ同じ。あっという間に選挙の大勢がわかってしまい、どうも味気ない。
▼今回の結果に最も胸をなで下ろしたのは中国だろう。新疆ウイグル自治区や香港で同様の住民投票をやればどうなるかは、習近平国家主席をはじめ幹部のみなさんはよくわかっているはず。自由な選挙によって、自らの運命を決められる喜びを知らないまま一生を終える中国人は、本当に気の毒である。
9月20日 2014.9.20 05:06 [産経抄]
<memo>
・日除けとして朝顔とパッシオンフルーツを植えたが、今は朝顔はすっかり枯れた。パッシオンフルーツは4本植えたが、実は一つしかつなかった。その実も成長せずに朽ちた。日除けにはゴーヤが最適でと思われる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます