株式会社AN代表取締役の向山かおりです。
前回はユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」が、どのような文化的背景に基づいているのか、そして「和食」がSDGsの考え方に適っていることについてお話ししました。
今回は、とある世界文化遺産を巡る取り組みから、サスティナブルな観光のあり方について考えたいと思います。
岐阜県の白川郷は、合掌造りの建物が並び、特有の生活・文化を持つことが評価され、1995年に世界文化遺産に登録。
以来国内外から多くの注目を集め、人口約1600人の村に年間約215万人が訪れる観光地になりました。
観光が村の経済を支えるようになる一方で、観光客が多く訪れるようになったことで生じたのがオーバーツーリズムの問題でした。
白川郷はコロナ禍に地域でこの課題に向き合い、その取り組みがオランダのNGOグリーンディスティネーションによって評価され、2020年には「世界の持続可能な観光地100選」に選出されました。
評価されたのは、予約制の観光システムと防火対策の取り組み。
予約制の観光システムは、バスの利用者、マイカー利用者いずれも含む完全予約制でオーバーツーリズムに直接対応するもので、 観光客からも世界遺産保全のための必要性を理解する声が多いそうです。
一方、茅葺屋根の家屋が広がる白川郷において、防火対策は重要なもの。
防火訓練、防火水源の点検などを村民の相互扶助によって行うと同時に、 集落内の加熱式たばこの専用ブース、集落外の紙巻たばこを含む喫煙ブースの設置により、喫煙者のニーズに配慮しながら火災リスクを低減させています。
こうした取り組みは、地域の生活・文化を守りつつ観光と両立させるものですが、 その根底にあるのは、白川郷で大切にしてきた「結(ゆい)」の心です。
冬は雪に閉ざされる厳しい自然環境にある白川郷では、様々な暮らしや行事の場面で家同士の助け合いが必要とされ、住民同士の相互扶助の関係が築かれてきました。
この「結」の心は現代にも受け継がれ、そして進化しつつあると言います。
例えば合掌造りの茅葺屋根の吹き替え作業を、村をあげてみんなで協力して行っており、 かつ最近では屋根に利用する芽刈りの作業などをツーリズムに組み込んで、外部の人も巻き込む動きも見られています。
人と人とのつながりを大切にし、力を合わせて助け合う「結」の心が、 白川郷のサスティナブルな観光のあり方を実現しているといえるでしょう。
近年は観光はもとより、社会課題の多くは、様々な関係者の理解と協力が解決において重要になっています。
当社も、コラボレートを通じて新たな価値を創出し、将来に渡って地球環境や私たちの生活を守っていくという理念に基づき、今後も情報を発信してまいります。
引き続きよろしくお願いします。